罪と罰の狭間 ページ15
ヤシロは、Aのことを太郎さん、と呼ぶ。
俺がそう呼ぶように頼んだんだ。
何故って？
怪異は噂どおりに行動しなければならないものだ。
俺がトイレの花子さんとして「呼び出した人間の願いを叶え、大切なものをひとつ奪う」という噂の通りに行動しているように、Aも噂の通りにしなければならない。
そもそも太郎さんの噂自体が古いものだし、七不思議に比べても本当に細々としか噂されない。
噂自体が完全に消滅してしまえば、Aは自分の境界を失ってしまう(…まぁ、そうなったらなったで俺の境界に居て貰えばいい話なんだけど)。
だからヤシロに“噂を作って”貰う。
太郎さんという存在を噂として流すのだ。
でもそれにはリスクもある。勿怪のように尾ひれがついた噂に操られてしまうこともある。
生きた人間が太郎さんという怪異を知っていれば、境界は保たれる。
ヤシロに太郎さんという怪異の存在を深く認識して貰えれば、それだけAは怪異としてここに居られるから。
居なくなったら悲しいから。
互いの罪を知り、許しあう仲なんだ。
「私が許すの」、なんてまるで生前の俺と同じことを言う。どんなに傷つけられても、怪我をさせられても、じっと我慢して「俺が許す」って言い続けた。
俺たちの消えることは決してない罪の証は今も側にある。
俺の懐には包丁が、Aの太ももの横には古ぼけた裁ちばさみが。
人殺しという罪を、怪異を統制することで償う為の武器として、罪の象徴として。
あの夏の日、怪異となってすぐのAの手元へ裁ちばさみが現れた。ネジがとれ、２つにばらけた黒い持ち手の鋭いはさみが。
俺はすぐに理解した。
Aがそれで人を殺めた過去を持つことを。
怪異となり、肉体の死を迎えたAを嘲笑うように、罪の証はその姿を現した。
罪と罰の狭間、彼岸と此岸の境で存在するモノ。
Aはそれになったのだ。
手の中に現れたはさみを見たAは明らかに狼狽していた。
「……なんで、どうして………？
置いてきたのに」
「落ち着いて、A。
大丈夫。
俺もAと同じ罪を犯してる。
凶器にした物は怪異の手元へ現れて本人を守る武器になる。
俺の包丁が、そうだよ。
おいで、土籠の所に行こう。もうすぐ１６時だから」
茫然自失状態のAの手を引いて書庫まで連れて行った。蝶が止まり、入口が開く。
「土籠ィ〜、七三Aの本ってどこ？」
境界の主を呼ぶと、Aがぴくりと反応した。
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ほのか - やばい。私の好みにどんぴしゃり！ (2020年8月4日 9時) (
レス) id: ef884c23cc (このIDを非表示/違反報告)
?返事がない、筆記試験終了の安心で寝ているようだ(プロフ) - ひえっ、めっちゃ細かく考えられてる、すげぇ… (2020年2月15日 8時) (レス) id: e085487720 (このIDを非表示/違反報告)
すばる - 乾 巽さん» ですよね!!うぅ〜......土籠先生... (2020年2月5日 17時) (レス) id: f38b18c5a9 (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - すばるさん» そうなんですか…いきなりログインできなくなる系困りますよね (2020年2月2日 17時) (レス) id: a83f0b56fb (このIDを非表示/違反報告)
すばる - 乾 巽さん» わああ!!ありがとうございます!!!それがですね、設定ってどこぞや?と思って血眼で探したらログインしないと出てこない系でした...Wii Uなんで、前ログインできてたんですけど何故か去年の夏からログイン出来なくて...ぴえん(；ω；) (2020年2月2日 17時) (レス) id: f38b18c5a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：乾 巽 | 作成日時：2020年1月19日 11時
