トイレの太郎さん（女）ですが何か？【地縛少年花子くん】

先生の正体 ページ36

「１６時の書庫って七不思議あるじゃないですか。
私、先生についてそこに行ったんです。
過去は読みました、未来は赤いページになってたので読みませんでした。白黒赤の本は、全て一冊を示してるんだろうと思って」


そこで怪異の姿に戻った土籠を見たのだと。
土籠は、七不思議や怪異のことについて少女に教えた。少女の本に「七不思議と怪異について教わる」「怪異に興味を持つ」と書かれていたからだ。
土籠はその通りにした。
興味深そうに、珍しく目を輝かせるように話を聞く少女は怪異について聞き終わると楽しそうに笑った。

その笑いが、何を意味していたのか土籠には分からなかった。

繰り返し言うようだが、本の記述には日記形式で出来事が綴られている。話す言葉、起こす行動、そういうものが箇条書きに書かれているにすぎない。

一つ一つの仕草が、どんな感情で行われているのかまでは分からない。多感で気まぐれな女子中学生ならなおさらだ。


その日、土籠は少女の本に再び目を通した。
それは、まるで良くできた一つの小説のような人生が綴られていた。

担任の教師に恋をした少女の拙い恋物語だ。
担任が怪異であることを知った彼女は、普通に高等部へ進学、大学を卒業後、国語科の教師としてかもめ学園に赴任する。
大学在籍中の成人式で告白、結婚の約束を取り付ける。
卒業後結婚し、そこで花子と出会い過去の罪を償い続けるため、夫と永遠の時を過ごすために怪異となった________。


頭に花が咲いたようなハッピーエンドが綴られていた。担任のどんなところが好きで、いつから好きで…なんてことは書かれていないが、紛れもなく両者の合意の末に婚姻関係を持つと書かれていた。

土籠は、それを飽きるほど読んだ。
繰り返し読み返し、内容を暗記してしまうほどに。
そして楽しみにもしていた。
怪異である自分が、生きた人間_____しかも元生徒にどう惹かれ、愛するまでになるのか。

楽しみだったのだ。



「土籠(つちごもり)先生ー！」
「オゥ、どうした」


地味な低い一つ縛りを尻尾のように跳ねさせながら駆けてくる姿を見るのが楽しみだった。
本に綴られた未来の通り、彼女は歳を重ね立派な大人になり、婚姻の前夜に自分の罪を告白し、それすら受け入れられ幸福を手に入れるのだろうと。
そう、信じて疑わなかった。

確定された幸せな未来。
それを享受できるはずだったのだ。


「……….なんで未来が書き変わってる…ッ？！」

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