トイレの太郎さん（女）ですが何か？【地縛少年花子くん】

バカにすんな ページ31

確かにオレは弱いし、輝兄に比べたら勝てるところなんて一つもない。だからって何も考えなくていいわけねー。
輝兄がオレのこと守ろうとしてくれてんのは分かる、でもオレだってちゃんと考えてんだよ、まだ未熟だし考えが足りなくてバカかもしんねーけど。


「オレは弱いし！輝兄よかバカだけど！
何も考えなくていいなんてウソだ‼
そんくらい分かる！
オレは、確かに花子のこと何も知らないで良いとか悪いとかテキトーに決めて、全然、ダメだったと思う。
でも怪異だから、危ないからって全部祓っちまうのはなんか…違ぇんじゃねーかって」


ぼろぼろ溢れてきた涙を拭って続ける。
何か、オレには分からないような理由があって、それをあいつらなりに苦しみながら償い続けてるんだとしたら。何も知らないままで悪いって決めつけるのはなんか違う。


「今すぐは無理でも、オレもっと強くなるから、それからどうするかオレが決める！
必要ならオレが祓う！
だから輝兄は手ぇ出すな！」
「明日、その２人が生徒を襲うかもしれないんだよ」
「そ、れは、オレがそうならないように監視する！
責任取るから」


輝兄は、何か少し考え込んでから微笑んだ。


「本当はこのまま祓った方がいいんだろうけど、お前に嫌われるのはいやだし。
わかったよ、その言葉忘れないように。

でも、今回だけだよ。光」


次はない、ということだ。
緊張が解けて尻餅をつくと、地面に手をついてしまい傷口が痛んだ。
それを隠しながら花子と太郎に向き直り、宣言する。


「つーわけだ。明日からオレがお前らを監視する。
ちょっとでも悪さしたら即効祓ってやるから覚悟しとけ！

……なんだよ、まだ泣いてんのか？」


体育座りのままじっとしている花子が気になり、顔を覗き込む。と、思い切り押し倒された。


「期待してる、と言いたいところだけどまだまだ君には俺を祓えないよ。こんなら手に引っかかってるよーじゃね」


花子の手には、つままれた目薬があった。


「あ！？てめっ、それ…ウソ泣きかよ‼‼」
「あはは」


花子より瀕死のダメージを負っていた太郎がようやく体を起こして息をついた。


「本当に祓われるところだった。
刀身握ったら切れるに決まってるでしょう、危ないことするんだから…」


左手の切り傷を見て悲しそうな顔をされたから慌ててそれを隠した。


「大した怪我じゃねーよ」
「大した怪我だよ、少年。手当てしようね」


助けてくれてありがとう、と太郎が呟いて微笑んだ。

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