１３７ ページ40
個性を抽出するというのは地道なものだった。
毎日１時間、個性を植え付けられた脳無(肩に乗るほどの小さい脳無。神野で見た脳無のミニチュアサイズ)に触れ続けられるだけ。
少しずつ結晶化するらしいが、３日ほどでは小指の爪の先程度しか結晶にならなかった。
「ちなみにその脳無の名前はクリスタルちゃんじゃ、可愛いじゃろ。転送用のこの子はジョンちゃんじゃ」
「はぁ…可愛い…？」
じっと脳無を見ていても、時々ぎょろん！といきなり白目を剥くため驚くし、剥き出しの脳味噌が乾燥してしまわないのか心配ですらある。
正直可愛いとは思えない。
部屋にいても暇なため、氏子さんの所に行っていても別に嫌な顔はされなかった。
「…このラジオ、何を受信してるんですか？」
ラジオから聞こえて来るのは音楽番組でもトークでもなく、戦闘音だった。ショベルカーのような掘削音、樹木の倒れる音、岩の削れる音。
「最初に言ったじゃろ、調教中じゃと。
もう１人のオールフォーワンの側近を手懐けとる真っ最中じゃ。もうこれで一ヶ月になるかの」
「どう考えても人間の出せる戦闘音じゃないのが混じってると思うんですけど…重機でも使ってるんですか？」
「わっはは、ははは！
重機か、まぁ違いない！
重機に匹敵するパワーがあるのは確かじゃ。
見てみるか？
そろそろ睡眠時間の筈じゃ。
マスターピース完成に手を貸してくれた礼じゃよ。
それに、死柄木達が最低限の格をつけるまでわしは完全に敵連合をサポートする気はないからの。
敵ではないがいつでも助けるわけじゃない」
見てこい、とジョンちゃんのつまみをいじられ、口の中から黒い液体が吹き出した。
これ気持ち悪いから嫌いなんですけど、と文句をつけたかったが仕方ない。
放り出されたのはどこかの山奥だった。
１１月も末の山は肌寒い。
見渡す限り山だから、よほど山奥なのだろう。
「…あ…？なんでお前がここにいんだ？幻覚か？」
のそのそと木立の間から姿を現したのは死柄木弔だった。ぼろぼろになった服に汚れた体。
周囲に連合のメンバーはいない。
「今転送で送られてきたよな？
ドクターと接触してんのか…あー、考えんのもだるい。眠い。
ちょっとこっち来い」
「……良いけど」
何をする気だ。
眠そうに手招きされ、近寄るとどさりと押し倒された。岩の上に尻餅をつき、驚いて受け止める。
腰に両腕が回されたことで一瞬五指が触れ、痛みが走った。
「眠い。寝かせろ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 234人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
乾 巽(プロフ) - 諸行無常さん» すっきりしてもらえて良かったです！テンション上がってて今冷静になりましたw (2020年1月31日 20時) (
レス) id: a83f0b56fb (このIDを非表示/違反報告)
諸行無常(プロフ) - 全然気づいてなかったです！時系列どのあたりなんだろうって気になってたのでスッキリしました！ (2020年1月17日 23時) (レス) id: eaf6a162a2 (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - 澪さん» やったあ！仲間ですね！ (2020年1月17日 23時) (レス) id: a83f0b56fb (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - 私も氏子さんのもしかしてと思ってたので仲間がいてうれしいです (2020年1月17日 23時) (レス) id: 75338ea4b0 (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - BT21 さん» ありがとうございます！オバホにどうしても幸せになって欲しくて…！辛さを乗り越えハピエンに辿り着けるよう更新頑張ります！ (2020年1月16日 5時) (レス) id: a83f0b56fb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：乾 巽 | 作成日時：2019年12月30日 3時
