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「確かにそうだな。
それはともかく、敵の一人の顔が分かったと言っていたな」
「えぇ、そのUSBの中に入っています」
「情報提供に感謝する」
USBを渡し、帰路に着こうとするとオールマイトに呼び止められた。「ちょっと待っ」まで行って吐血された時には、無表情を保ってはいたが内心は心臓が喉元まで迫り上がったかと思うほど驚いた。
血をハンカチで拭うとオールマイトは校舎を指差して言った。
「エリちゃんには、会って行かないのかい？君に長い間会えないと聞いて寂しがっていると聞いてるよ」
「…会っていいのか分かりません。
もうこのまま死穢八斎會と関わることなく生きてもらえればと思う反面、実の祖父である親父さんに会わせてやりたいとも思ってしまって」
どう接すればいいのか分からない。
私は笑理ちゃんから自由と血肉を搾取してきた。
優しい人柄を装っても、笑理ちゃんを傷つける計画に加担してきた。
廻の手回しと構成員の虚言によって問われるはずだった罪から逃れ、なんら法に罰せられることなく空の下を歩いている。
その罪悪感が笑理ちゃんに会ったら溢れてしまいそうで。
純粋無垢で綺麗で優しい小さなあの子の前では、私の全てが否定されてしまいそうで。
自分の汚さが、醜さが浮き彫りになるようで。
怖い。
「…君に会いたくて寂しくて泣きそうな女の子に会いに行くのも、ヒーローじゃないのかな。
そうでなくとも、母親代わりなんだろう？」
母親。
その単語に、唇を噛んだ。
最後に廻と笑理ちゃんと私の３人で買い物に行った日の朝、廻が言ったことを思い出してしまったから。
「今日は俺のことを父さん、Aのことを母さんと呼べ」、なんて。
嘘まみれの戯れの家族ごっこは、酷く居心地が良くて。自分が笑理ちゃんを傷つける人間だということも忘れて。
束の間の平穏でも、仮初の家族の、いつかは壊れる幻想だとしても、ほんの少しでも長くあのままで居たかった。
「Aさん……？」
可愛らしい小さな声が私を呼んだ。
振り向く？
振り向いたら駄目。
返事をしないと。
答えちゃ駄目だ。
「Aさん、お仕事終わったの？
とっても忙しいって聞いてたの、忙しいの終わったらまた会えるって言ってたから、忙しいの終わったんだよね」
楽しそうに、嬉しそうに言葉を紡ぐのは、紛れもない笑理ちゃんの声だった。
そして、最後の一言が真逆の意思を反復する頭をかき混ぜた。
「あのね、会いたかった！」
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乾 巽(プロフ) - 諸行無常さん» すっきりしてもらえて良かったです！テンション上がってて今冷静になりましたw (2020年1月31日 20時) (
レス) id: a83f0b56fb (このIDを非表示/違反報告)
諸行無常(プロフ) - 全然気づいてなかったです！時系列どのあたりなんだろうって気になってたのでスッキリしました！ (2020年1月17日 23時) (レス) id: eaf6a162a2 (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - 澪さん» やったあ！仲間ですね！ (2020年1月17日 23時) (レス) id: a83f0b56fb (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - 私も氏子さんのもしかしてと思ってたので仲間がいてうれしいです (2020年1月17日 23時) (レス) id: 75338ea4b0 (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - BT21 さん» ありがとうございます！オバホにどうしても幸せになって欲しくて…！辛さを乗り越えハピエンに辿り着けるよう更新頑張ります！ (2020年1月16日 5時) (レス) id: a83f0b56fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：乾 巽 | 作成日時：2019年12月30日 3時
