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その日私は、死穢八斎會の一支部、シノギの一部にもなっているいわゆる「何でも屋」の一室に居た。
私立事務所で、探偵の真似事から土木系の求人などを行う、死穢八斎會で唯一残った“真っ白な会社”だ。
ヒーローや警察に踏み込まれても何も出てこない。
ここは、もしも死穢八斎會が終わる時が来た時の、最後の生命線だ。
もしもの時の。
大量の顧客データの読み込みをしながらメールを打っていると携帯が鳴った。両手が塞がっていたため小指の関節でパスワードを打ち込み通話に出る。
「はいもしもし？」
「A姉、すんません、壊理が…逃げました」
聞こえてきたのは動揺した声だった。
動揺、というよりもひどく怯えている。
「え？壊理ちゃんが？」
「オーバーホールに知らせたら、俺、きっと殺され…」
「落ち着いて。黙ってた方がまずいから、今すぐ言いに行って。
私もすぐそっち戻るから」
通話を切り、ペットボトルの珈琲の蓋を閉めるとそれを掴んで席を立つ。
窓際で同じように事務作業をしている事務員の
「すみません、抜けます！」
「はぁい、いってらっしゃい。気をつけてね」
陶子さんは構成員の奥さんで、カタギだが一昨年のクスリのいざこざで夫を亡くしている。そのため就職先としてここを紹介したのだ。
陶子さんに頭を下げ、通りを走って路地裏に飛び込んだ。携帯を取り出し、廻に電話をかけるが、繋がらない。
______いっそこのまま。
悪い考えが頭をよぎった。
このまま逃げてしまって。
ヒーローに保護されてしまえば。
壊理ちゃんは傷つかない。
このまま逃げてくれたら。
そんな甘い考えは携帯の着信音で砕かれた。
廻からだ。
「…もしもし」
「西通りに来い。壊理を見つけた」
「随分早く見つかったのね」
「昨日の実験で発信器を埋め込んである」
息を飲み、怒りを込めて言い返す。
「、ちょっと待って。
昨日は私がこっちに泊まり込みだったから実験はしないって言ってたでしょう」
“また”やったのだ。
「何で廻はそんなに壊理ちゃんを…痛めつけるようなことをするの？
痛みなら私が受け入れるから、もうやめて」
痛くても構わない。
苦しくたっていい。
壊理ちゃんが少しでも苦しまないなら。
私達がやっていることは壊理ちゃんの体を売り捌いていることだ。
許されることじゃない、それでもせめて苦しまないように。
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乾 巽(プロフ) - 燈@トランペットさん» ありがとうございます！うわぁ恥ずかしい…、スペルミスです…。コメント嬉しいです、更新がんばりますね！ (2019年12月17日 19時) (
レス) id: a83f0b56fb (このIDを非表示/違反報告)
燈@トランペット(プロフ) - 突然失礼します！「HAR DATA」の「HAR」のスペルは“彼女の”って意味で使っているのなら「HER」ではないでしょうか。(HARを意図して使っているなら、私の知識不足なのでゴメンナサイ) この小説とっても面白いので更新頑張ってください！応援してます。 (2019年12月17日 19時) (レス) id: bd1442fb11 (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - 刹鬼さん» ありがとうございます！コメント、とても嬉しいのでなんか思うところがあったらバンバン言ってくださると嬉しいです！ (2019年12月14日 8時) (レス) id: a83f0b56fb (このIDを非表示/違反報告)
刹鬼(プロフ) - 初コメ失礼します。面白くて思わずクスッと笑ってしまったり、ドキドキしながら読ませて貰っています。これからも頑張って下さい、応援してます。長文、失礼致しました (2019年12月14日 1時) (携帯から) (レス) id: 363b2bec95 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：乾 巽 | 作成日時：2019年12月3日 18時
