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「それまで手は出さなくて良いと思う」
「Aがそういうなら。
その通りにしよう」
廻はあっさりと決めて珈琲を飲み始めた。
私の話なんて聞いてくれないように見えて、その通りにしてくれる時もある。
本当によく分からない。
珈琲を口に含み、舐めるように飲み込む。
濃く苦く淹れられた私好みのエスプレッソが、いつもより苦いように思えた。
バタバタと足音がして台所のカーテンが押しのけられた。
「若頭、個性持ち同士の喧嘩です！」
「場所と被害は？」
見回りに行っていた若い衆の報告だった。
廻が軽く視線を上げて聞き返すと外を指差して答えた。
「近隣の小学校の側で、地面操作と針の個性です。登校中のチビ達が巻き込まれそうで、取り敢えず避けさせたんすけど…」
ヤクザの仕事は基本的にその土地の商店街や街から一定の収入を得ることで街の安全を保障する、ある意味
金を渡してくる保護対象の範囲内を抗争に巻き込まず、暴力行為も行わない。
他の街から入り込んだ暴力団や犯罪組織を叩き出すのも本来の仕事。
まぁヒーロー飽和時代に入ってくると、そのしきたりも“悪しき風習”として追いやられつつある。
「ヒーローが来るまで待っていろ、暴力団如きが私刑行為をするな」ということだ。
クスリの売買に手を染める前ならいざ知らず、今の死穢八斎會は警察から見たら完全なる犯罪組織だ。
ヤクザは侠客だ、なんてもう言えはしない。
けれどこうやって治安維持を偽善にも続けているのは、親父さん派の構成員も多いからだ。
飲んでいた珈琲を一息に飲み干して皿を片付ける。
「私が行ってくる。クロノ、朝ご飯ご馳走様」
「いってらっしゃいやせ、お気をつけて」
ジャケットを羽織って内ポケットに改造拳銃を押し込み、紐靴を履いて玄関を出た。
朝の道路を突っ走り、小学校の前の交差点に出るとぐにゃりと平衡感覚が揺れた。
揺れたのは地面、コンクリートそのものだ。
「入中さんみたいな個性か。迷惑な…」
もう一人は山嵐のような針の個性で、ばらまかれた針がうねる地面で波打ってあちらこちらに飛び散らかる。
登校中だった小学生達が通れず、教師達が警察に要請の電話はかけたようだったがまだ到着していない。
「チビ達の目塞いどいて」
子供の教育に悪いのは重々承知なのだ。
針の個性に向けて発砲し、その弾丸だけを“受け入れた”。
怪我はしないが痛みは取り残したままだから、撃たれた痛みは存在する。
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乾 巽(プロフ) - 燈@トランペットさん» ありがとうございます！うわぁ恥ずかしい…、スペルミスです…。コメント嬉しいです、更新がんばりますね！ (2019年12月17日 19時) (
レス) id: a83f0b56fb (このIDを非表示/違反報告)
燈@トランペット(プロフ) - 突然失礼します！「HAR DATA」の「HAR」のスペルは“彼女の”って意味で使っているのなら「HER」ではないでしょうか。(HARを意図して使っているなら、私の知識不足なのでゴメンナサイ) この小説とっても面白いので更新頑張ってください！応援してます。 (2019年12月17日 19時) (レス) id: bd1442fb11 (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - 刹鬼さん» ありがとうございます！コメント、とても嬉しいのでなんか思うところがあったらバンバン言ってくださると嬉しいです！ (2019年12月14日 8時) (レス) id: a83f0b56fb (このIDを非表示/違反報告)
刹鬼(プロフ) - 初コメ失礼します。面白くて思わずクスッと笑ってしまったり、ドキドキしながら読ませて貰っています。これからも頑張って下さい、応援してます。長文、失礼致しました (2019年12月14日 1時) (携帯から) (レス) id: 363b2bec95 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：乾 巽 | 作成日時：2019年12月3日 18時
