さよなら愛しい人 ページ35
◇
『うん、これでいいかな』
テーブルの上に並ぶ夕食。
きっとお腹を空かせて帰ってくるユウくんとグリムを待っていると2人が帰ってきた。
「ただいまなんだゾ〜！」
「Aちゃんただいま！」
『おかえりなさい、ユウくんっ、グリム！』
2人におかえりと言うこの瞬間が私は好き。
これ食べてもいいのか！？ と言いながらテーブルの上にある夕食を見て涎を垂らすグリムに手を洗っておいで、と言うとグリムは洗面所へ向かった。
「あ、そうだAちゃん。さっき学園長に呼び出されたんだけど」
『なんのお話だったの？』
また学園長先生はユウくんにお仕事を頼んだのかな。
私はユウくんの言葉の続きを待った。
「元の世界に帰る方法が見つかったんだって！」
『…………えっ？』
ユウくんの言葉に頭が真っ白になる。
今、ユウくん……なんて……？
「……それでね、明日帰ることになったんだ」
『帰る……そ、うだよね、ユウくんの世界は、ここじゃないもんね……』
「Aちゃん？」
そうだよ。ユウくんの世界はここじゃない。
ユウくんには帰る世界があるのに、どうしてずっと一緒にいられるって思っていたんだろう。
いつかは帰ってしまうって、わかっていたのに。
『帰られる方法が見つかってよかったね……っ』
私、ちゃんと笑えてるかな。
ぎこちなくないかな。
ごめんね、ユウくん。
心から良かったって、言えなくて。
「Aちゃん、今まで本当にありがとう」
私に向けられるユウくんの笑顔がもう見られなくなる。
そう思ったら胸が痛んだ。
『わた、し……食器取ってくるね……！』
「僕も手を洗ってくるよ。今日のご飯も美味しそうで食べるのが楽しみ」
私は小走りでキッチンへ駆け込んで床に座り込んだ。
座り込むと同時に涙が零れた。
ユウくんの前で零れなくて良かった。
ユウくんがいなくなると知ったと同時に自覚したこの気持ちはあまりに遅すぎた。
『っ、ふ……ユ、ウくん……っ……』
お願い、帰らないで。
ずっとそばにいて。
私はユウくん、あなたが
あなたが好き。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 524人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ここ(プロフ) - オクタ好き好きさん» お返事ありがとうございます^ ^かしこまりました。お時間いただきますが、書けましたら更新いたします^ ^ (2021年4月27日 6時) (
レス) id: e9ce79e520 (このIDを非表示/違反報告)
オクタ好き好き - はい、オクタでお願いします (2021年4月26日 22時) (レス) id: 905c688a73 (このIDを非表示/違反報告)
ここ(プロフ) - オクタ好き好きさん» オクタ好き好きさんリクエストありがとうございます^ ^お話に出てくるお相手は人魚繋がりでオクタヴィネルでよろしいでしょうか？ (2021年4月26日 15時) (レス) id: e9ce79e520 (このIDを非表示/違反報告)
オクタ好き好き - リクエストをしたいのですが主人公が人魚になる話が見たいです。 (2021年4月26日 14時) (レス) id: 905c688a73 (このIDを非表示/違反報告)
ここ(プロフ) - ちょりさん» ちょりさんっ！！こちらこそありがとうございます！読んでくださると信じてました！（笑）何度もだなんて……嬉しすぎます〜(*^_^*)実はラギーくんのお話を何個か書いている途中なので完成しましたらまた更新しますね♪ (2021年4月19日 8時) (レス) id: e9ce79e520 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ここ
| 作成日時：2021年3月18日 10時
