7:千線の彩光 by mofumegane ページ8
いつの間に気を失っていたのだろう。
見上げると、空の光は少し翳っていた。
「凍さん?」
呼びかけに応じるかのように、こちらへと視線を運ぶ新緑の瞳。
「新しい扉が開けたのか…あとどのくらい続くんだ…?」
「分からん。だけど、嫌な予感がする」
そう淡々と答える凍さんは、どこか疲れているような雰囲気だった。
「凍さん?様子がおかしいが…」
「ここは俺達だけの要素で構成されてるだろ?」
痺れを切らし、狐の発言を呈してそう告げた。
その瞳には、みかんを見据える強い光が反射していた。
「確かに。だが、それと今何が関係が…?」
「この世界、ずっと…永遠に続きそうなくらい途方も無いよ、この状況だと。」
「進んでる気もしないしな…進展が全く無い」
「だから、考えたんだ」
そう言って一息つくと、フェンスの手すりに寄り掛かった。
生温い風が吹き、その温度に不快感を抱いた。
青紫のフードがはためき、光を裂くように音を鳴らす。
「俺たちのどっちかに___」
「___この世界から出る鍵があるんじゃないかって」
一瞬の静寂は、双方の心境を測るのに十分だった。
空が一層翳り、太陽の光を半分隠す。
きっと、二人は仲間であるはずなのに___何故、こうも心臓は激しく脈打つのだろう?
それは、みかんが感じたことであった。
「つまり、その鍵は…僕らどっちかの死にあると?」
「まだ考察しか行ってないのに、何でそういう結論になったんだ?」
「さあね。僕もただの考察さ。」
空が曇る前に
先程の、みかんの不安で満ちた表情はさっぱり無くなっていた。やけに愉快そうに、凍さんの反射光を避けるように嗤う。
「その考えに行き着くってことは、凍さんも薄々気付いていたんじゃないか?
ああ…君は僕にとって、とても眩しい存在だった」
そう言い終えると、みかんは泣き笑いのような表情を見せた。
「純粋で、優しい…そう感じてしまった」
「獅子をも凌駕する…強い光に気圧されて、君の本質に少し遠のいてしまった。」
結局何が言いたいのか掴めないまま、凍さんは目線を下に落とす。
フェンスの下には、何もない、ただの靄のみ。
彼らの精神はほぼ限界だった。幾多の精神を蝕む試練で。
様々な光を白と黒の髪に取り込んだ凍さんは、まるで宝石で出来た獅子のようだった。
「みかんさんが鍵だって、そう認めるのか?」
急なみかんの、訳の分からない行動に苛立ちを覚え、そう問いかけた。
先程負傷した凍さんの手首が、僅かに傷んだ。
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mofu megane(プロフ) - 桜道 あすかさん» ありがとうございます!励みになります...! (2021年12月30日 23時) (レス) @page4 id: 950de74267 (このIDを非表示/違反報告)
桜道 あすか - 面白そうですね。更新待っております。 (2021年11月23日 12時) (レス) id: 47dc307598 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mofumegane&黒獅子凍 | 作者ホームページ:youtube.com/channel/UC-31h_OvshlXRHaXmKewceQ
作成日時:2021年11月22日 22時