氷国の女医2 (ページ10)

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彼女のトラウマページ10

【回想】

アイスランド救命医研修時代

「A先生！出血が止まりません！！」

『っ…』

肩で息をしながら目の前の患者の止血を行う。

しかし交通事故で運ばれてきた患者は

全身をひどく損傷しており処置が追いつかない。

研修医の私は他に助けを求めようとするものの、

救命医のほとんどが隣町で行われている学会に

出向いているため誰もいない。

唯一、居合わせたDr.幸太が居るが

彼は一緒に運ばれてきた人のオペに入ってしまっている。

ﾋﾟｰﾋﾟﾋﾟﾋﾟﾋﾟﾋﾟ

「心拍停止！」

ナースの声に気が動転する。

しかしひるんでいる暇が無いことくらい

私でも分かる。

心マを行うがその間も損傷部からの出血は続く。

患者の血を全身に浴び

血まみれになりながらも手を動かす。

オペ室に警告音と心マの音だけが響く。

『お願い、戻ってきて…お願い…』

気がつけば全身に浴びていた血が乾いていた。

「A先生もう…」

ナースの呼びかけをかき消すように心マを続ける。

このままいかせるわけにいかない。

だってあなたは…