氷国の女医2 (ページ33)

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【過去編】過去の記憶ページ33

音羽side

喜多見チーフは静かに話し始めた。

喜「国際医療組織に所属し、

紛争地を始めとした国々を転々と回っていた俺は

次の配属先が決まるまでの間、

技術交換の目的でとある国を訪れるよう

組織から命じられました。」

彼の言葉に確信を得たくて問う

音「そのとある国というのは」

喜「そうです。アイスランドです。

そこで俺はA先生に出会いました。

彼女がまだ現地で研修を終え

専攻科目を決める前の出来事です。

組織の命令でアイスランドに来たものの

宿が無かった俺を、

同じ日本人のよしみで彼女は家に居候させてくれました。

そこから1年弱、彼女と過ごす中で色々な事が起きました。」

【回想】

彼女と暮らすようになって2ヶ月程した頃、

時間が合えば彼女の料理を食卓で囲んで

一緒に食べるのが当たり前になってた。

『幸太さん、私専攻科目決めました！』

喜「お、どこにするんですか？」

『救命救急科です！』

喜「え…ほんとうですか？」

『はい、私幸太さんの命に向き合う姿を見て、

私もあなたみたいな医者になりたいなって

思ったんです』

喜「なんだか…照れますね」

これから起こる困難を知らない彼女は

キラキラした瞳で明るい未来ばかりを想像していた。

紛争地域を転々としてきて

この世の中はそんなにいいものじゃない事など

とうに分かっていたはずの俺もまたしかり。

分かったつもりになっていただけで

俺も彼女も何も分かってなどいなかった