氷国の女医2 (ページ16)

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病院についてから、

何となくまっすぐMERに行く気になれなくて

いつもの場所に向かう。

屋上に設置されてあったベンチに寝そべり

空を見てたそがれる。

どんよりとした雲はまるで

私の気持ちを表してる様だとか

大それたことを思い眺める。

「またここに居たんですね。死にたがりですか？」

『…音羽先生』

私の視界に入ってきた彼は冷たく見下ろす。

『…何か用ですか？』

音「いえ、これを。」

そう彼が突き出したのはスナバの紙袋。

『頂けるんですか？…ありがとうございます』

紙袋を覗くとそこには

『フナッペ！』

今季限定の新作フナッペが入っていた。

そのうち行きたいなとは思っていたので

思わぬ対面に心が踊る。

ストローを差し1口、

口に入れるとチョコレートの甘みが口に広がる。

音「お口にあったようで良かったです」

『はい！でも、急にどうしたんですか？』

「以前、不本意に作られた貸しのお返しです。」

そう言われば彼の身を案じて

久我山さんに連絡したこともあったなと思い出す

『あれは私のお節介でやった事です。

フナッペも本当に冗談で言っただけなので

気にしなくても良かったんですよ』

そう言いつつまた1口、フナッペを吸い上げる。

「本当にお余計なお世話です。

ただ貸しを作ったままというのが

私の性分に合わないもので。

今後こういったことはしないでください」

『分かりました。さ、MERに戻りましょ？』

きっと彼には彼のやり方があったのだろう。

そこに手を出してしまったのは自分なので

張り合うこともせず身を引く。

立ち上がり扉に向かう私に音羽先生が問いかける

音「発作は良くなりましたか？」

『はい、お陰様で元気ですよ』

取り繕った笑顔で振り返ると

いつもの冷たい睨むような顔とは違い

こちらを真っ直ぐ見つめる音羽先生がいた。

まるで心まで見透かされてしまいそうで

思わず目をそらす。