氷国の女医2 (ページ15)

今日:27 hit、昨日:63 hit、合計:29,283 hit

発作のトリガーページ15

Aside

ﾋﾟｰﾋﾟﾋﾟﾋﾟﾋﾟﾋﾟ

室内に響くモニターの警告音。

「心停止！」

肩で息をしながら今出来ることは何かと

精一杯頭をフル回転させる。

出血部にガーゼを当てるも瞬く間に赤く飲み込まれる。

心マを行うがその間も損傷部からの出血は続いている。

患者の血を全身に浴び血まみれになりながらも手を動かす。

オペ室に警告音と心マの音だけが響く。

『お願い、戻ってきて…お願い…』

気がつけば全身に浴びていた血が乾いていた。

こんな一刻を争う状況なのに

自分の状況を把握する暇を与えてしまう自分に腹が立つ。

ナースが何か言っているようだが

気が動転している私に

彼らの言葉を理解する余裕は無かった。

彼らの声をかき消すように心マを続ける。

目が覚めると部屋に陽が差していて

朝をむかえたことを知る。

汗だくで荒い呼吸からまたあの夢を見ていたんだと思った。

『ッ…！！』

あの日から向き合い続けた自分の手が

赤くべっとり染まってるかのように見え

目を見開きフリーズする。

瞬きをしてもう一度確認すれば

もちろんそんなことなくて、気のせいだと気づく。

のそのそと起き上がってはコップに水を1杯注ぎ飲み干す。

身支度を済ませ、鏡の前に立つ。

口角を上げてみるが目の前に移る下手くそな笑顔に嫌気が経つ。

あの日から上手く笑えなくなってしまったように思う。

ハッと暗くなってしまったのに気づき

頬を叩いて気合を入れる。

『よしっ！』