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俺の腕の中にすっぽりと収まってしまった彼の表情は見えなかった。
だが、嫌がられてはいないようだった。


「…っ…あ…りがとう…ございます…」


そう言って、彼の手がおずおずと俺の背中に回ってきた。



俺は嬉し過ぎて、つい抱き締める腕の力を強めてしまった。





「あ゛っ!!!」



ムードをぶち壊すように、そう声を発したのは



「望」

「おい流星っ!!お前俺が居らん間に重岡さんに何してんねん!!」

「…望、しー」

俺は先程と同じように、人差し指を口の前に持っていった。

望ははっとしたように辺りを見渡し、口を手で押えていた。

そして俺と重岡さんの前までやって来て、

「…重岡さんっ、こいつに何もされませんでしたか!?」

「…へ…だ…大丈夫です、」

「温かいタオル持ってきたんで、これで目を…」

「あ…ありがとうございます、」

「いえいえ、座りましょ。」




*******



「おい、流星もっとあっち行けや。重岡さんが苦しいやろ」

「それを言うならお前がや、望がベタベタ引っ付くから重岡さん困っとるやろ」

「べっ…ベタベタはしてへんし!!」

「重岡さん、寒くないですか?10月やけど、だいぶ夜は冷えますからね、俺のパーカー着ますか?」

「あっ!!重岡さん、俺のパーカーの方があったかいですよ!!」

「望のは辞めといたがいいですよ、望今日の昼ごはんの生姜焼き落としよったんで」

「っばかお前それは言わんでええやろ!重岡さん、流星のパーカーてろってろで着ても意味無いんですよ、」




「…ふふ…あははは…」


「…重岡さん…」

重岡さんはずっと笑っている。

余程ツボにはまったのか、身を屈めて腹まで抑えてしまった。



「…はあぁ…やっぱり…2人共仲ええんですね、」


今度は笑い泣きだったのか、また目を擦っていた。



「あぁ、重岡さん、擦ったらいけません、」

「タオル、また濡らしてきましょうか?」


俺らがそう言って覗き込むと、重岡さんはまた顔を真っ赤にしながら先程のテンションはどこに行ったのか、消え入るような声でいえ…と言って俯いてしまった。

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作者名: | 作成日時:2020年9月26日 22時

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