あなたに愛を (ページ43)

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「…っと…智っ…が…智が…じ…事故に遭って…」

「…えっ、神山さんが…？」

「…はい、今からっ…病院に…向かう所で…」

失礼します、と言って俺らに背を向けようとしたが、

とてもやないけど、今の重岡さんを1人に出来なかった。

「重岡さんっ！！病院、どこのですか？俺らも着いていきます」

「ーー病院…です。」

「確かここ真っ直ぐ行った所にタクシー乗り場あったな」

俺と流星で重岡さんの腕をしっかり掴んで、タクシー乗り場に向かった。

タクシーに乗り込み行き先を伝え、移動している途中も、重岡さんは不安で仕方ないのか、スーツの裾を握り締めていた。

仕事終わりに急いで来たのか、スーツもヨレてしまっているし、髪も乱れていた。

「…っきっと大丈夫ですよ、大丈夫。」

そう言って、重岡さんの背中を優しく摩る。

数分で、病院に着いた。

重岡さんは俺らの分のタクシー代も置いて、タクシーから降りると、急いで病院の中に行ってしまった。

俺らも後を追って病院に入って行った。

彼は既に神山さんの居場所を聞いたのか、そちらに早歩きで向かっていた。

「…っ神山さん大丈夫やろうか…？」

「…せや…な」

とにかく、重岡さんが向かった方に俺らも歩いて行くと、『神山智洋』と書いてあるプレートがかかっている部屋から看護師さんが出て来た。

「…神山さんは大丈夫なんですか？」

「…一先ずは。ですが…。まだ油断は出来ない状況です。あの…神山さんの…」

「…え…と、知り合いです。」

「そうですか、ご家族の方以外は面会が出来ませんのでご了承ください。」

「…はい、分かりました。」

看護士さんは俺らに頭を下げると、ナースステーションへ戻って行った。

「朝の…あの事故って…」

「多分やけど、…神山さん、巻き込まれとったんやろうな…」

そう言って流星がスマホの画面をこちらに向けてくる。

ニュースになっていたらしいその事故の現場は、やはり、朝のあの場所だった。

「飲酒運転の車やったんやて。」

「…っ神山さん、大丈夫やろうか…」

外からは、中の様子が少ししか見えない。

どうやら神山さんはまだ目を覚ましていないようで。

重岡さんはこちらに背を向けているため、表情までは見えないが、きっと憔悴しきっているのだろう。

目を背けたくなるほど、神山さんの身体にはたくさんのチューブが繋がっている。

神山さんの事も心配だったが、重岡さんの事も心配で仕方がなかった。