あなたに愛を (ページ30)

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「あっ！！！」

「…何やねん、急に大声出すなや。」

「…あかん、リュック新幹線に置きっぱや。」

「…何してんねん。」

「…どないしよ、」

「じゃあそのリュックは何やねん。」

「これは財布とか色々入っとる方。」

「…じゃあ別にええやん。」

そうなのだ。別に焦って取りに戻る程大切な物は入っていない。

寒くなった時の為のひざ掛けや、パーカー。カイロとか、そういったものだから。

俺は極度の寒がりやから、いくらまだ10月やからと言っても油断出来んくて、持ってきたけど、まぁ、今日は晴れとるし、大丈夫やと思いたい。

「あ～え～でも、気になるなぁ。」

「ええって、取られへんって。もう時間もギリギリやし。スタッフさん待ってくれてんねんから。撮影終わってから確認しに行こうや。」

「…うん。」

そう言われ、俺は流星と共に待ち合わせ場所に向かった。

東京はやはりいつ来ても、人の多さがえげつない。

それに、改札口でスタッフさんと落ち合い、車に乗り込む為駅の外に出た瞬間、向かい側のデジタルサイネージに俺らのCMがデカデカと流れている事に気付いた。

喜ばしい事だが…

俺らはただでさえこの身長でバレてしまう上に、朝だからと油断して、サングラスをかけたり帽子をかぶったりなどの対策をしなかった為、俺らに気付いた人がこちらに一斉に近寄ってき、それにつられるように余りの騒ぎを不思議に思った別の人達にまで気付かれてしまい、辺りは人で溢れ返ってしまった。

つい昨日も、やらかしてしまったのに、俺らは学習してないのか…

スタッフさんは必死に俺らを車まで誘導してくれる。

だが、その間、

デジタルサイネージに丁度重岡さんが映っているのが見えた。

辺りは確かに俺たちのせいで人で溢れかえっているが、その中の数人、いや数えきれない程たくさんの人は画面に映る無名の謎の男性に目を奪われている。

本当は、あんな綺麗な重岡さんを他の人に見られたくない

…俺なんて事考えてんねやろ…

でも、本当なのだ。

俺の方が、ずっとずっと先に彼の魅力に気付いたし。

そんな事を思いながら、スタッフさんに連れられるまま、用意されていた車に乗り込んだ。