あなたに愛を (ページ20)

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やっと眠れそうだったのに、その頃には教室がザワザワと騒がしくなってきた。

他のクラスメイトがどんどん登校して来ているからだ。

これなら、いつもみたいに時間ギリギリまで家に居れば良かった、そんな事を思っていると、

「ねぇ！！新作のトリートメントのCM見た？」

「うん！！！見た見た！！」

俺の席の近くで、2人の女子がそんな話をしだした。

あぁ、せや、昨日から流れるようになったんやったな。

「藤井くんと小瀧くんも出てたよね！！」

「そうっ！！藤井くん…あっ…寝てる…」

「きっと仕事で疲れてんねんな。そっとしとこ！！」

せやで、俺は色んな意味で疲れてんねん。

まるで俺に聞かせたいかのように、わざわざここで話さなくてもええんやで。

「そうだ！！藤井くんと小瀧くんと一緒に映ってたもう1人の男の人誰やろー？」

「ねっ！！私も思った！！」

「あの人の事めっちゃ気になっとるのに、調べても出てこんのよ～！！」

そりゃそうやろうな。

俺やって、知りたいのに、分からんもん。

「藤井くん起きたら聞いてみる？」

「せやね！！」

あぁ、聞かれるん…めんどくさいなぁ

そんな事を考えていると、

「あれ、流星今日めっちゃ早いな？」

そう言って俺に声をかけてきたのは、

「…望。」

「何や、えらいクマが酷いな。寝不足か？」

「…まぁ、そんなとこ。」

「ふーん…まぁ、無理すなよ。」

「…おん、分かっとる。」

「次の土曜は撮影やねんから。」

「…おん。」

そんな事を望と話していると、先程の女子2
人がこちらに寄ってきた。

「…ねぇ、藤井くん、小瀧くん。」

「…」

「どうした？」

何も答えない俺に代わり、望がそう尋ねる。

「あの、新しいCMで、2人と一緒に出とったもう1人のモデルさん名前なんて言うん！？」

「…あー…あの人、モデルやないねん」

「…えっ？そうなん？？」

「おん。一般の人やで。」

「えっ！？そうやったん！？」

「おん。やから、名前は教えられん。ごめんな？」

「…っううん！大丈夫！！教えてくれてありがとう！！2人とも忙しいやろうけど、仕事頑張ってな！！」

「ありがとう」

そう望が告げると、2人は自分達の席へ戻って行った。

確かに、このCMが流れてからSNSでは結構話題になっていた。

ありがたい事に俺らのこれからの仕事も増えた。

そして1番は…

もう1人の無名の男性、つまり重岡さんの事についてだった。