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「…不自由ないかァ、その腕で」
「うん。実弥こそ」
「ん、まァ」
実弥の屋敷の縁側に墓参りを済ませた私たちは、座って空を仰いでいた。
空は何処までも澄んでいて、そして広がっていて。低い位置から私たちに暖かさを届ける太陽は、その光を斜めから降らしていて、暖かみが多い光だけが私たちに齎されている。
─────午後三時半の陽の光が、実弥を包んでいた。
「…好き、実弥のことが」
呼吸をするように口から零れ出ていた。ピクリと肩を震わせた実弥は、ゆっくりと私を見た。大きな目を、さらに大きく広げながら頭を振った。
「俺といたらAが駄目になる。Aが死ぬのことになる。もうこれ以上、Aを苦しめる訳にはいかねェ」
実弥の握りしめる手は、小刻みに震えていた。少なからず語尾も震えていた。実弥は更に続けて、幸せになってくれ、と。
「……どうして皆して決めつけるの、匡近はそんなことなかった」
「A」
「わかってるよ。可笑しいことだって実弥の言ってることだって」
「A」
「だったら、そんなこと言うなら何でずっと私を呼んだの？私に逃げて来たの？散々、私を求めておいて。何で。何でさ！」
「──A」
声を張り上げた実弥は、私の名前を口にすると頭を抱えながら、すまない、と何度も何度も謝罪の言葉を紡ぎ続けた。
その姿はどこまでも痛々しくて惨めだった。犯した罪の重さに耐え切れぬ、泣き喚くような罪人のようだ。
苦しむ貴方は、涙を流しながら私の腕を引いて抱き締めた。伝わる熱は、私の死んだ心に優しく投げかけた。鎮まれ、眠れ、と。
先程から変わらない午後三時半の陽の光も一緒になって、私に鎮まれ、と唱え続けた。歌い続けた。
でもそれはまるで、実弥に対してもそうなんじゃないかと思われた。
弟のための自己犠牲の果てに、逃げ込んだ私に対して、苦しみながら自問自答を繰り返し、腐り朽ち果て屍となった実弥もいるのだ。
私は触れるべきではなかった。私と貴方の間にあるのは同じ生業の冷めた関係がよかった。そうすれば、苦しむ貴方は生まれてこなかった。
自己犠牲の果ての罪、共犯、とでも言えばいいのだろうか。
「ごめんね」
ゆっくり、唇を重ねた。すると貴方も唇を重ねてきた。何度も重ねる内に、どちらからともなく、揃って立ち上がった。縋るような口付けになる頃には、畳に寝転がり、双方の着衣を剥ぎ取るように手を伸ばしていた。
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蓮(プロフ) - 環さん» 環さん、コメントそして労い言葉有難う御座います！本作は私自身悩みに悩み一度は本気で削除しようと思ったお話なので、お褒めの言葉がとても沁みます(;_;)風車は重要な言葉の一つでしたので環さんの考えを聞けて私は嬉しいです！最後まで本当に有難う御座いました！ (2021年6月12日 10時) (
レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 蓮さん完結おつかれさまです、ありがとうございます。すごくすごく美しいお話でした。コメントさせてもらうのも恐縮でしたが、この感動をお伝えしたいなと思いまして。最後に風車が回ったのも夢主が前に進めた、時がやっと進んだのかなと思いました。素敵なお話でした！ (2021年6月11日 18時) (レス) id: 940f9d3174 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - 猫巻さん» 猫巻さん初めましてコメントそしてお祝いのお言葉も有難う御座います！苦しい鬼殺の世界でも希望を忘れずに自分らしく生きようとする夢主で御座いました！理解し難いお話でしたがそう言って頂けたこと最後まで猫巻さんに読んで頂きこちらこそ本当に有難う御座いました！ (2021年6月11日 16時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - りりさん» りりちゃんコメントありがとう！雰囲気や軸がブレないようにいつもより慎重に言葉選びしたから本当に書いた甲斐がありました…そしてりりちゃんの考え方が本当にその通りすぎて素敵です。りりちゃんの考えを知れてよかったです！最後まで読んでくれて本当にありがとう！ (2021年6月11日 16時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - 唯梨さん» みいちゃん、コメントありがとう！好き嫌いが両極端な話だけど読んでくれてありがとう！それぞれの意味はみいちゃんの好きなように受け取ってね、否定的でも何でも私は構いません！みいちゃんの考え方を尊重します！こちらこそ最後まで読んでくれて本当にありがとう！ (2021年6月11日 15時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蓮 | 作成日時：2021年5月8日 20時
