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 私と匡近は同期だった。匡近は絵に描いたようなお人好しで、匡近含め他の同期と中々馴染めずにいた私にもお構い無く話しかけてきたこともあって、私は皆と日々の鍛錬を共に励むようになった。
 隊士たちの鍛錬用にと借り上げられた道場で、互いに叱咤し汗を流すのがお決まりで、この時だけは皮肉だが、鬼殺の世界に己の命があるということを忘れることが出来た。



「そう言えばさ、この間すごい奴に会ったんだよ」
「すごい奴?」



 白い道着を身に纏い、木刀を振るたびに汗が垂れる額で匡近は言った。私が腕を止めて小首を傾げていれば、「Aは知らなかったか、ごめん」と匡近は笑った。



「鬼殺の隊士でもないのに、無茶苦茶なやり方で鬼を狩ってる奴がいるって噂になっててさ、そいつに俺会ったんだ」



 ブンッと空気を斬る音が響く。鬼の急所が頸だと言うことも知らず、沢山の武器を武装して太陽で焼くという自分の命を擲つような少年だったと、匡近は話した。
 鬼に対する膨れ上がる憎悪と怨讐(えんしゅう)が後ろ盾して、そんな危険な事をしているのかと私は思った。



「だからさ、俺の育手を紹介したんだ」


 今頃絞められてんだろうな、と言いつつも何処か嬉しそうに無邪気に笑う匡近の顔を横目に見た。





*





 忙しなく道場から出て行った匡近と不死川を見て、私はそう遠くない昔に匡近と交わした会話を思い出した。そうか、あの時言っていた少年というのが不死川実弥なのだと私は理解した。
 そして今までの危険行為が蓄積した結果が、身体に出来た無数の傷跡なのかということも同時に理解した。


 私はもう一度、静かになった道場の床に寝転んだ。


 一縷の希望も、その瞳には宿っていないように感じられるほど不死川のそれは酷く冷たいものだった。
 匡近があれほどまでに不死川を気に掛けているのも、彼の性分を考慮すれば納得がいく。自分の可愛い弟弟子ともなれば尚更だ。
 「不死川実弥、か」と一人だけの道場に私の声が響いた。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 不死川実弥   
作品ジャンル:恋愛
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(プロフ) - 環さん» 環さん、コメントそして労い言葉有難う御座います!本作は私自身悩みに悩み一度は本気で削除しようと思ったお話なので、お褒めの言葉がとても沁みます(;_;)風車は重要な言葉の一つでしたので環さんの考えを聞けて私は嬉しいです!最後まで本当に有難う御座いました! (2021年6月12日 10時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 蓮さん完結おつかれさまです、ありがとうございます。すごくすごく美しいお話でした。コメントさせてもらうのも恐縮でしたが、この感動をお伝えしたいなと思いまして。最後に風車が回ったのも夢主が前に進めた、時がやっと進んだのかなと思いました。素敵なお話でした! (2021年6月11日 18時) (レス) id: 940f9d3174 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 猫巻さん» 猫巻さん初めましてコメントそしてお祝いのお言葉も有難う御座います!苦しい鬼殺の世界でも希望を忘れずに自分らしく生きようとする夢主で御座いました!理解し難いお話でしたがそう言って頂けたこと最後まで猫巻さんに読んで頂きこちらこそ本当に有難う御座いました! (2021年6月11日 16時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - りりさん» りりちゃんコメントありがとう!雰囲気や軸がブレないようにいつもより慎重に言葉選びしたから本当に書いた甲斐がありました…そしてりりちゃんの考え方が本当にその通りすぎて素敵です。りりちゃんの考えを知れてよかったです!最後まで読んでくれて本当にありがとう! (2021年6月11日 16時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 唯梨さん» みいちゃん、コメントありがとう!好き嫌いが両極端な話だけど読んでくれてありがとう!それぞれの意味はみいちゃんの好きなように受け取ってね、否定的でも何でも私は構いません!みいちゃんの考え方を尊重します!こちらこそ最後まで読んでくれて本当にありがとう! (2021年6月11日 15時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2021年5月8日 20時

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