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「お前がそこまでする必要、俺はないと思うけどな」
ついに柱稽古が始まった。一人目、元音柱、宇髄天元の元から去り際、彼は私の背中を通して私自身に言葉を紡いだ。
私は、彼に背を向けたまま動くことが出来なかった。呼吸もままならない程、彼の言葉の意味を反芻していた。
晴れるとも降るとも言えない、中途半端な色味の空は、どこか親近感が湧いてくる。まるで、ふわふわと、曖昧な覚悟を持つ私を空が鏡となって写しているようだった。
頬を撫でる風が、生温く、妙にぞわぞわとして何故か不快感と嫌悪感が拭えない。
どっちつかずの私に対して、彼の言葉がこの不快感と嫌悪感の原因なのか。はたまた、本当は私自身も彼と同じ考えで、煉獄くんに対しての不快感と嫌悪感なのか。
宇髄さんと煉獄くん。彼らは相反する道しるべを私に提示している。でも結局、どっちの道を選んでも待っているのは同じことだ。今を選んでも、未来を選んでも。
「あの人は不器用だから」
「だから？」
「……今も、未来も、選べない。これでいい」
ゆっくりと振り向き、彼にそう告げた。銅器を鮮やかに色付ける鳶の色を瞳に持つ彼は、その瞳を揺らめかせ、ぐっと唇を噛み締めていた。
全ては弟の為、その命を賭す彼は寿命の前借りなど惜しまない。そして、実弥の力がこの世界には必要不可欠ということもまた事実。
自分を大切に出来ないような人間に、自分よりも大切に思う誰かを救うことなんて出来ないと私は思っている。
私が以前、実弥に対して思っていたことだけど、今ならわかる。
自分よりも大切に思う誰かのためならば、私自身を捧げる。見返りなんて求めない。
─────貴方がそうするように、私も。
「これで実弥が救われるなら、それでいい」
恋か、愛か、それとも依存か、執着か。もう既に、言葉には表せない程、大きく深く膨れ上がった想い。
傷付き迷いながらも、それでもいい、それでもいい、と言い聞かせ続けてきた心はもう、刻を待たずして屍と成り果てた。
雲が晴れた。隙間から地上へと降り立つ光線には、赤ん坊の頬のような柔く暖かな赤みが含まれていた。
午後三時半、私の心にそれは、癒やしなんて聞こえのいい物ではなく、出来かけの瘡蓋を剥がし奥に潜む膿んだ傷口を抉るような物だった。
既に屍となっているにも関わらず、鋭い痛みが私の全神経に伝導され、あまりの痛みに声を荒げて泣きたくなった。
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蓮(プロフ) - 環さん» 環さん、コメントそして労い言葉有難う御座います！本作は私自身悩みに悩み一度は本気で削除しようと思ったお話なので、お褒めの言葉がとても沁みます(;_;)風車は重要な言葉の一つでしたので環さんの考えを聞けて私は嬉しいです！最後まで本当に有難う御座いました！ (2021年6月12日 10時) (
レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 蓮さん完結おつかれさまです、ありがとうございます。すごくすごく美しいお話でした。コメントさせてもらうのも恐縮でしたが、この感動をお伝えしたいなと思いまして。最後に風車が回ったのも夢主が前に進めた、時がやっと進んだのかなと思いました。素敵なお話でした！ (2021年6月11日 18時) (レス) id: 940f9d3174 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - 猫巻さん» 猫巻さん初めましてコメントそしてお祝いのお言葉も有難う御座います！苦しい鬼殺の世界でも希望を忘れずに自分らしく生きようとする夢主で御座いました！理解し難いお話でしたがそう言って頂けたこと最後まで猫巻さんに読んで頂きこちらこそ本当に有難う御座いました！ (2021年6月11日 16時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - りりさん» りりちゃんコメントありがとう！雰囲気や軸がブレないようにいつもより慎重に言葉選びしたから本当に書いた甲斐がありました…そしてりりちゃんの考え方が本当にその通りすぎて素敵です。りりちゃんの考えを知れてよかったです！最後まで読んでくれて本当にありがとう！ (2021年6月11日 16時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - 唯梨さん» みいちゃん、コメントありがとう！好き嫌いが両極端な話だけど読んでくれてありがとう！それぞれの意味はみいちゃんの好きなように受け取ってね、否定的でも何でも私は構いません！みいちゃんの考え方を尊重します！こちらこそ最後まで読んでくれて本当にありがとう！ (2021年6月11日 15時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蓮 | 作成日時：2021年5月8日 20時
