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鬼殺隊は、着実に戦果を上げていった。
多大なる被害を受けながらも、遊郭に潜む上弦の伍、陸を撃破。しかし、それが誘因となり、音柱─────宇髄天元が柱の座を退いた。これで、柱の空席が二つとなった。
戦果を上げるもののその代償は大きく、より一層、彼が遠のく気がしてならなかった。
そして、刀鍛冶の里を襲った一夜は、またも我々、鬼殺隊の勝利に終わった。
この一夜で、今まで鬼殺隊に強く荒狂う追い風が吹当たっていたが、それが一転した。
恋柱と霞柱─────甘露寺蜜璃と時透無一郎の二人が痣を発現させた。痣の発現については、全鬼殺隊士に知らされた。
痣の発現により、身体能力が飛躍的に上がるだけでなく、追ってしまった傷でさえも、おおかた考えられぬ速さで回復の一途を辿る。
これにより、多くの柱を死に追い込んだ上弦の鬼とも渡り合えるようになる。それ故、残された七人の柱は、痣の発現が急務となった。
─────しかしそれにも代償があった。
痣の力は、寿命の前借りだった。痣者は例外なく、二十五歳を待たずに死ぬ。
目の前が真っ白になった。
痣の発現と一般隊士の鍛錬を兼ねた、柱稽古が間近に迫る中、私はずっと実弥のことばかり考えていた。
「─────A」
ぶるぶると激しく震え上がりながら、水平線の向こう側に帰っていく太陽。その合間に太陽が、世界中の全てを赤く色付けていた。
土手の真ん中。細々と、でも懸命にその背丈を伸ばそうとしている雑草が、私を睨み付けているように感じた。
どうして今なんだろうか。背後から聞こえる実弥の声を無視して私は歩き続けた。溜め息がその後すぐ聞こえてきて、そしてすぐ、私の腕を掴んだ。
振り払うことも、振り向くことも、私には出来なかった。今、そんなことをしてしまえば、確実に涙が落ちてしまう。
「……明後日からだなァ。柱稽古」
お前なら大丈夫だ、と優しい声音だった。私は腹が立った。影が長く長く伸びていて、それが斑に爛れる私のようだった。
煉獄くん。やっぱり私が思ってたことは、間違いなかったよ。安寧の日々が訪れたその暁には、彼はもうこの世にはいない。私は屍だ。
「……実弥なら、痣、出せるよ」
返事がなかった。でもそれが肯定だと、わからないほど私は子供じゃない。
だからこそ、だからこそ、苦しくて、本当はやめて、と貴方に言いたかった。
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蓮(プロフ) - 環さん» 環さん、コメントそして労い言葉有難う御座います!本作は私自身悩みに悩み一度は本気で削除しようと思ったお話なので、お褒めの言葉がとても沁みます(;_;)風車は重要な言葉の一つでしたので環さんの考えを聞けて私は嬉しいです!最後まで本当に有難う御座いました! (2021年6月12日 10時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 蓮さん完結おつかれさまです、ありがとうございます。すごくすごく美しいお話でした。コメントさせてもらうのも恐縮でしたが、この感動をお伝えしたいなと思いまして。最後に風車が回ったのも夢主が前に進めた、時がやっと進んだのかなと思いました。素敵なお話でした! (2021年6月11日 18時) (レス) id: 940f9d3174 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - 猫巻さん» 猫巻さん初めましてコメントそしてお祝いのお言葉も有難う御座います!苦しい鬼殺の世界でも希望を忘れずに自分らしく生きようとする夢主で御座いました!理解し難いお話でしたがそう言って頂けたこと最後まで猫巻さんに読んで頂きこちらこそ本当に有難う御座いました! (2021年6月11日 16時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - りりさん» りりちゃんコメントありがとう!雰囲気や軸がブレないようにいつもより慎重に言葉選びしたから本当に書いた甲斐がありました…そしてりりちゃんの考え方が本当にその通りすぎて素敵です。りりちゃんの考えを知れてよかったです!最後まで読んでくれて本当にありがとう! (2021年6月11日 16時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - 唯梨さん» みいちゃん、コメントありがとう!好き嫌いが両極端な話だけど読んでくれてありがとう!それぞれの意味はみいちゃんの好きなように受け取ってね、否定的でも何でも私は構いません!みいちゃんの考え方を尊重します!こちらこそ最後まで読んでくれて本当にありがとう! (2021年6月11日 15時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蓮 | 作成日時:2021年5月8日 20時