3日目―2 ページ7
「……ふざけるな!!!」
「……え?」
今までただ黙っていた俺が、急に声を荒らげたことに驚いて、女はこっちを向いた。
俺は女の両肩を思いっきり掴んで、自分でもよくわからないままに怒鳴り散らした。
「なにが人生が嫌だ、なにが消えたいだ! お前はそれで良いのか!? そんくらいで消えたいほど軽い人生だったのか!?」
女はただ黙ってこっちを見ていた。
俺はさっきの女みたいに、一方的に怒鳴り続けた。
「俺は、俺はなあ! 娘の顔が見たかったのに、見れないまま死んじまったんだよ! 必死に働いて、身重の嫁を支えて、漸く産まれるって時に、事故に遭ってな!!」
いつの間にか、俺の目からはとどめなく涙が溢れて来ていた。
涙は俺の体をすり抜け……地面に落ちていった。
「なのに、なのによお……!!」
俺は今まで出したことのない、最大級の声で叫んだ。
「なんでやっと会えた娘に、目の前で『消えたい』なんて言われなきゃいけないんだよ!!」
女は呆然として、またその目からポロポロ涙を零していた。
そのまま震える唇をゆっくり開き、掠れた声で呟いた。
「………………お父さん…………?」
……………………
誰もいない、真夜中の公園のブランコに、女性が1人、座っていた。
女性はしばらく呆然と前を見ていた。
しかししばらくして、鞄から携帯電話を取り出し、そのまま通話を始めた。
「もしもし、お母さん?……こんな夜遅くにごめんね……」
女性の通話相手の声は、とても怒っている様子だった。
今まで何をしていたんだ、なんで連絡しなかったんだ、と。
女性が反論しようとした、その時、
電話口から、すすり泣く声が聞こえてきた。
電話の声は言った、お前が出て行ってから、ずっと心配だった、と。
女性は思った。
相変わらず、感情が移り変わりやすいな、と。
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