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小さな頭にそっと手を置いて、小さな子どもを諭すようにそう言えば、ゆっくりと頷く。無自覚でこれなんだから誰だってお手上げだ。
本音を言えば俺だって帰ってほしくないけど、さっきから斜め上から鋭い視線がするのにAは気付いてない。
…ごめんってマクヒョン、そんなに睨まないでよ。
Aに荷物をまとめるように催促すれば、パタパタと小さく足跡を立てて行ってしまうから、自然とヒョンと2人きりになる。
随分昔から一緒に過ごしてるからお互いのことは知り尽くしているし、ヒョンに対して気まずい、なんて気持ちは微塵もない。むしろこの人の精神力や価値観は成熟し過ぎていて、全て尊敬したい部分でしかない。
どんな時であろうと俺たちにとっては“どんな時も頼れるヒョン”だから。
だからこそ、この完璧なヒョンに敵うわけないってことくらい分かりきっていることだから。
MK「やっぱりジェノとAって仲良いんだな」
『…どうしたの急に、それはヒョンもでしょ』
MK「いや、そういうことじゃなくて、Aの目が安心しきってるから」
…そんなの当たり前だろ、ヒョンよりもずっと前に、Aの魅力に気付いていたのは俺なんだから。
溢れそうになる黒い感情に慌てて蓋をして、いつも通りの笑顔を貼り付ければ、その純粋さで透き通った瞳が同じようにくしゃりと細められた。
RJ「ヌナ、暇な時カトクして。俺とも遊んでよ」
「ヌナは明日でも明後日でもいつでもいいよ」
RJ「明日も1日仕事ってさっきマクヒョンが言ってましたー」
「えへ、バレた？」
誰にも隔てなく手を差し伸べて、歩み寄る。
そんな部分が好きでもあって、憎くもある。
「ジェノや、ご飯誘ってくれてありがとうね」
『ふふ、うん また来てね』
RJ「ヌナ約束だからね？」
「はいはい、分かってるよㅎㅎ」
MK「まだ寒いから暖かくして寝ろよー」
「それじゃあ、2人とも、おじゃましました」
玄関のドアが開かれて、この季節特有な生温い空気が入ってきて、何とも言い難い曖昧な気持ちになる。
“A”
そう呼び止めれば、俺に背を向けたはずの彼女が少し驚いた表情で振り返る。子どもじみた方法でしか張り合えないカッコ悪い俺だけど、今は少しだけ足掻かせてよ。
『やっぱ何でもない、またね』
ふんわりと笑って手を振ってから、今度こそ俺に背を向けたその後ろ姿。
いつまでも弱虫なのは、俺だ。
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作者名：めろんぱん | 作成日時：2023年3月13日 17時
