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高めのポニーテールに、しばしばと瞬かせる瞳。一体いつ着替えたのか、部屋着からブラウスに黒パンツという格好になっているが、この顔は間違いなくアヅミだ。
「えっ、どういうこと……もしかしてアヅミもゲームに入っちゃったの?」
「げぇむ?何の話でございましょう」
「何のってさっき話してたじゃん!というかアヅミが紹介してきたんじゃん、ワナビークイン……わぁッ!?」
「姫様!?」
ともかく彼女に駆け寄ろうとしたとき、急に地面がなくなり頭から床にダイブしてしまった。ゴンッ、と鈍い音と共に、目の前に星が散る。
あいたたた、落っこちた……
「大丈夫ですか?A様!」
「は……」
Aさま?
今度は、私の目が点になる。
「お怪我はありませんか?……もう、先程まで眠っておられたのに急に動くからですよ。擦り傷は?骨折とかしてません?」
「大丈夫、だけど……」
オーバーな反応をする彼女に抱き起こされながらも、戸惑いが隠せない。
な、なんで敬語? なんで様付け?
「あ、あの、アヅミ……?」
どうしたの、と聞こうとした時、ふとアヅミの胸元にある『安曇 冬』と書かれたネームプレートに目が止まった。
(……あづみ、ふゆ?)
アヅミの本名は、安曇原冬雪なのに。
でもどっかで聞いたことがあるような名前だな……
……あ、
(アヅミの、ゲーム名……)
確かあの人、ゲーム用の名前とか、作ってた気がする。記憶が正しければ、それが『安曇 冬』だったかも……
じゃあ、もしかして、この子は私の知ってるアヅミじゃなかったりするの……?よくよく思い返してみたら、この子の黒パンツスタイルにポニーテールって姿、あのゲームの召使いと、全く同じ格好、だけど……
『ちなみにあたし、今この子でプレイしてるんだ〜』
まさか、と思った。
今、私の目の前にいるアヅミは、召使い。
そんでもって私が入ったゲームの機体は、“アヅミのスマホ”。
つまり、何が言いたいかっていうと……
この乙ゲー世界は、アヅミのデータだったりするのでは?ということなのだ。
(うわマジか)
まさか、友達のデータ入り込んでるなんて!!
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