花と言の葉【snr】

しあわせになってください ページ15

「キャリーケース、ちゃんと持った？」

「持った」

「忘れものとかない？」

「ない」

「新幹線のチケットは！？」

「ここにある」

「あとはえっとー、うーんと……」

「ふふっ、流石カノジョやなぁ。心配せんでも全部確認したよ」

「ほんと？初めての全国ツアーだし、緊張しちゃうなぁ……」

「6公演やで？それじゃ全国少なすぎやろ」

「でも京都も行くし福岡もあるでしょ？ そのあとは静岡で、次は岡山、新潟……締めの宮城！去年は東名阪制覇したし、来年はもっと色んなところに行くんだから全国だよ」

「来年か、そんなにいけるかなぁ」

「いけるやろ！これからどんどん伸びて、まだ会えてへん人達に会いに行くんだよ……初演が京都でよかったね」

「うん。久しぶりに地元の空気吸ってくるわ。故郷でライブができるって幸せやんな」

「せやで、僥倖。帰ってきたら感想聞かせてね」

「もちろん」

「ふふふ……」

「いつも見送ってくれるけど、待ってる間寂しくなったりせんの？」

「え？」

「俺が家空ける時間長いやん。仕事あるから帰ってくるけど、ほぼ1週間とか留守にしてることとかあるし……帰ってくるまでちゃんと待っててくれる？」

「当たり前じゃん。待ってるよ」

「ごめん、変な言い方した。さみしいって言ってほしいねん」

「さみしいよ」

「ありがと」

「でも、センラが楽しそうだから我慢出来る」

「……」

「さー。新幹線に乗り遅れるで？ キャリーもってはよ行かんと……ってそうだ。渡し忘れたものあるわ____おまたせ。これあげる」

「花？」

「ん。スイートピー」

「綺麗やな」

「花言葉知っとる？ 門出って言うんやで」

「門出……」

「ふふふ。びっくりしたって顔しとんね。これ持ってライブ頑張ってき。みんなにファンサ送るんよ」


さぁ、行け行け、と押してきた手を握った。


「1個忘れ物」


近くにあった彼女の後頭部を引き寄せ、その唇にキスをする。一瞬驚いたように彼女は体を強ばらせたがすぐ俺の首に腕を絡ませて、頬を擦り寄せてきた。


「はよ帰ってきてよ…… 待ってるから」

「うん。それじゃあ、行ってくる」

「行ってらっしゃい」


別れ際にもう一度彼女を抱きしめて、ガチャリと玄関を開く。


「気をつけてね！」

「それじゃあね」→←ほかのだれかと

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