▽ ページ8
*
「ねぇ……」
「なぁに?」
「ちょっと近過ぎるんじゃない?」
私の隣を歩き出くうらたにおずおずとそう告げてみる。目をぱちくりとさせて、キョトンとする端正すぎる顔に、いやいやキョトンじゃないでしょー!?と叫びたい衝動に駆られた。
車から降りるなり、私はうらたに肩を抱かれたのである。現在進行形で体は密着しているし、ちょくちょく流れてくるこの優しい香りが毒だ。
第一何でこんなにピットり歩いてるの!?
周りの視線が痛すぎるんですけど!?
「だって、こうでもしてないとAに色ボケた塵が寄ってくるじゃん」
「塵!聖なる澪來夜学園の生徒を塵扱い!?」
「まぁ、本音を言えば俺がくっつきたいだけなんだけど」
「やっぱり!」
本当にうちの執事はーっ!!
思わず顬を押さえると「頭痛いの?」と尋ねられた。誰のせいだと思ってんだ。
羽衣石家の人間は、家柄上よく裏社会の刺客や犯罪者に狙われやすい。
先代が亡くなった今、羽衣石の血を継いでいる者は私しかいないから、学校でも何処でも、護衛をつけるようにしている。
だからと言って沢山の護衛を一般の学校に引き連れて来る訳にも行かないので、使用人の中でも特に身体能力が高くて、且つ、年齢的にも学校に入り込みやすいうらたが私と一緒に学園に通っているのだけれど、もう、毎回こんなことをしてくるから困る。
「学校での護衛は敬語外して生徒らしくしろーってAが言ったんじゃん。俺はそれに従ってるだけだし」
「確かに言ったけどさぁ!……」
その後の言葉は、敢えて萎ませた。
あの、その、これは、どちらかと言うと、生徒とかじゃなくて
(恋人、っぽいんだよね)
普通、友人関係の生徒同士なら寄り添って歩いたりしないでしょ?まぁ、今の状況は寄り添うとかじゃなくて、私が一方的に抱きつかれてるだけなんだけど
意識してしまった途端に、かぁっと顔が熱くなってきた。あーもーやだ!なんでうらたはそんな何ともなさそうな顔してるの!?
何が問題って、ここで突き放すことが出来たらいいのに、私にはそれが出来ないことなのだ。
うらたに抱きつかれてるのが、私は、嫌じゃ、ないのだ
「もういい。こっからは一人で行く」
「でも教室まだ遠いのに」
「大丈夫!そこまで護衛いらない!」
「ちょ、待……」
今度こそうらたの腕を引き剥がすと、教室まで残り一直線になった廊下を駆け出した
だって、もうドキドキしてるの誤魔化せそうになかったんだもん!
313人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆん@クイポイのリンクが欲しい人は一報ください(プロフ) - 翔さん» 返信が遅くなってすみません💦クイポイに引き続きコメントありがとうございます!夏はこれからですが、お陰様で元気に梅雨を明けることができました☺️翔さんも、お体を大事になさって過ごしてくださいね (2022年7月15日 22時) (レス) id: dd87fda9ce (このIDを非表示/違反報告)
翔(プロフ) - 更新有難う御座います。暑い日や、梅雨入りが始まりますがくれぐれもご自愛ください。 (2022年6月9日 19時) (レス) id: a4315e12d4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん@クイポイのリンクが欲しい人は一報ください(プロフ) - 明さん» 返信お待たせしてしまってすみません💦温かい言葉をありがとうございます😢❤️おかげで元気に執筆でき少しですが更新しました。お言葉に甘えてのんびりですが今後も投稿するので良ければ読んでやってください☺️お待ちしてます (2022年5月23日 18時) (レス) id: dd87fda9ce (このIDを非表示/違反報告)
明(プロフ) - いつも楽しく拝読させて頂いています。私はうらたぬきさんの君をどろどろに愛したいの作品が大好きです。気長にお待ちしているので更新して頂けたらとても嬉しいです。お体にお気をつけて、これからも頑張って下さい応援しています。 (2022年4月19日 1時) (レス) id: 55a247d923 (このIDを非表示/違反報告)
ユン(プロフ) - うらゆきさん» わー!嬉しいお言葉、ありがとうございます!是非とももどかしい距離の二人を愛でてあげてください!笑 (2021年7月30日 17時) (レス) id: dd87fda9ce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ