1,In the morning ページ3
「お嬢様、お目覚めの時間です」
爽やかな陽の光に照らされて羽衣石家の朝は始まる。開かれたカーテンの先にある庭園は、我が家ながら、綺麗に整えられていて見栄えがいい。
起き上がってぼんやりと外を眺めていたら、目の前に、恐ろしく形の整った顔に浮かぶ翠玉がひょっこりと現れた。
「眠気覚ましにキスと紅茶をご用意いたしました。どちらになさいますか?」
さらりと何とんでもないことを言ってるんだこの執事は。
「紅茶で」
「もー、つれないなぁ」
そうやって、くすくすと笑いながら紅茶の準備をするから、私をおちょくっているのだと思う。
うらたは、毎朝起きる度に__いや、正確には朝だけじゃなくて、二人きりになる度に、こんな風に甘やかしてくる。
とにかく、何気ない言葉ならもう慣れたものだけど、これでも私主人で華の女子高生なのに。この扱いあんまりじゃありません?
「どうぞ」
「ん、」
手渡された紅茶から、すんと華やかなシトラスの香りが広がった。
「アールグレイ?」
「はい。市場に新鮮な茶葉が出ていたので。ストレートでよろしいですか?」
「うん、ありがとう」
私が紅茶を啜るのを見届けながら、うらたは朝食を並べて、本日の予定は……と言った。
「朝食後、四ノ宮グループのご子息がお見えです」
四ノ宮グループ、という単語に、私は思いっきり顔を顰めた。
「お見合い?断ったのに」
「いえ、本日は女性向け新商品のご相談に来るそうです。お嬢の意見を聞きたいだとか」
「そんなのただの口実に決まってるじゃない」
最近こういうのが酷い。
学校でも仕事でも少しでも羽衣石の名前を出せば、あちこちから縁談の話が飛んでくる。私はまだ17歳だ。フィアンセなんていらない。
それに、どうせその縁談は、お家相続が目的に決まっているのだ。
「羽衣石がそんな没落貴族と関わる必要は無いし、私にそれを掬い上げる優しさはないから。私は、外の誰とも結婚したくないので、会いません」
「そう仰っても、向こうは大手企業の人間ですし、あまり無下には出来ないんじゃありませんか?」
「うらたは私に嫁入りして欲しいの?」
「ええ。ぜひとも俺の元に」
「なんか話の趣旨がそれた気がするんだけど」
でも、うらたの意見も一理ある。
没落とはいえお粗末に扱って面倒事に巻き込まれるのは困るな
どうやってあしらうか考えつつ、私は「接待の用意しておいて」とだけ呟くとベットから降りて身支度を始めた
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ゆん@クイポイのリンクが欲しい人は一報ください(プロフ) - 翔さん» 返信が遅くなってすみません💦クイポイに引き続きコメントありがとうございます!夏はこれからですが、お陰様で元気に梅雨を明けることができました☺️翔さんも、お体を大事になさって過ごしてくださいね (2022年7月15日 22時) (レス) id: dd87fda9ce (このIDを非表示/違反報告)
翔(プロフ) - 更新有難う御座います。暑い日や、梅雨入りが始まりますがくれぐれもご自愛ください。 (2022年6月9日 19時) (レス) id: a4315e12d4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん@クイポイのリンクが欲しい人は一報ください(プロフ) - 明さん» 返信お待たせしてしまってすみません💦温かい言葉をありがとうございます😢❤️おかげで元気に執筆でき少しですが更新しました。お言葉に甘えてのんびりですが今後も投稿するので良ければ読んでやってください☺️お待ちしてます (2022年5月23日 18時) (レス) id: dd87fda9ce (このIDを非表示/違反報告)
明(プロフ) - いつも楽しく拝読させて頂いています。私はうらたぬきさんの君をどろどろに愛したいの作品が大好きです。気長にお待ちしているので更新して頂けたらとても嬉しいです。お体にお気をつけて、これからも頑張って下さい応援しています。 (2022年4月19日 1時) (レス) id: 55a247d923 (このIDを非表示/違反報告)
ユン(プロフ) - うらゆきさん» わー!嬉しいお言葉、ありがとうございます!是非とももどかしい距離の二人を愛でてあげてください!笑 (2021年7月30日 17時) (レス) id: dd87fda9ce (このIDを非表示/違反報告)
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