○ ページ15
黄玉石の瞳が血溜まりを捉える。それから、ゆっくりと視線を私の腕へと移した
「来ないで」
無意識の内に言葉が漏れて、自身の腕を庇うように抱えた。もう嫌だ。血を吸われたくない。死ぬなら、このまま死にたい。
「腕、出して」
「嫌」
「なんで？」
「……来ないで」
捕まってなるものかと私に伸びる手を弾く。もう沢山だった。裏切られて、輸血して直ぐに血を吸われて、人形扱いもいい所だ。
「食べ、ないで……」
不意に瞼の裏が熱くなって、視界がボヤケて何も見えなくなる。あ、と思った時には涙が頬を伝って落ちていた。
血溜まりに水文が広がる
「……分かったから」
ギュッと手首を摑まれた。
あぁ、なんで。死ぬんだからほっといほしいのに。食べられ、苦しみながら死んでいく私を見て楽しもうって言うの？
「……止血せんと」
センラさんは間髪入れずに傷口に手を翳した。
予想に反する彼の行動に驚く間もなく、あの時と同じ感覚が全身を包み込んで、流血が止まった。
トクトクと命の灯火みたいな物が体を巡っていき、生気が戻っていくのが分かる。
体に、血が巡る。
ただ、それだけの事なのに、
生きてるんだな、って思ってしまった。
何度も、何度も死を間近にして、それでも私は未だに生きている。家族も友達も無くして、まだ生きている
「ごめん、なさっ……」
堪えていた
これから先の自分の事を思うと悲しくて、辛くて。
たった一人で、独りぼっちで食べられる為だけに生かされる。そして、誰にも知られないまま死ぬんだ。
この四人だって私を食べた後は、私の事なんて忘れてしまうんだ。
それは、
どんなに惨めな事なんだろう？
「ほんまに……君は魔物の前で泣いて、どうすんねん」
センラさんは少しため息をついて、私を抱き寄せた。長い腕に抱かれて、百合の紋様の服にじんわりと涙の染みを作りあげる。
温もりのない僵尸。つまりは生きる死体。
だけど、その腕の中は温かくて、
酷く、心からほっとしてしまった。
それは誰でも良かった。味方が欲しかった。
死にたいとすら、思う私を、偽りでも抱き留めてくれる人が欲しかった。
「今は、ゆっくりおやすみ」
大きな胸板に顔を押し付けるようにして、泣きじゃくった。泣き疲れて眠るまで、センラさんは私を抱き締めてくれていた。
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ユン(プロフ) - LiLi Kaさん» コメントありがとうございます！拘っていた所だったので、気づいていただけて、とても嬉しいです！！ LiLi Kaさんの仰る通り、濃いめの青にしてみました！！ (2020年6月16日 0時) (
レス) id: ca6f64574e (このIDを非表示/違反報告)
LiLi Ka(プロフ) - 惨めのところ色違う？濃い青みたいに見える…もしわざとなら主人様のセンス光ってる！ (2020年6月15日 20時) (レス) id: ef0b88e85e (このIDを非表示/違反報告)
ユン(プロフ) - tamaさん» コメント、応援ありがとうございます！そう言って頂けてとても嬉しいです！！よかったら、主人公ちゃんと4人の行方を見守ってあげてください！笑 (2020年6月9日 10時) (レス) id: ca6f64574e (このIDを非表示/違反報告)
tama(プロフ) - この作品、とても好きです！応援してます！ (2020年6月8日 23時) (レス) id: 38d6d4018c (このIDを非表示/違反報告)
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