4.僵尸の労り ページ14
どうして彼が吹き飛んだのかは分からない。
誰かが助けに来た訳じゃないし、私が彼を突き飛ばしたのでもなかった。
数メートル先で、紅色の染みをつけた天使の翼が苦しそうに動く。深緑に戻りつつあるエメラルドに睨まれて、ガタガタと体が震えた。
逃げなきゃ、今度こそ殺される。
フリーズした脳が遅れながらも動く。私はドアを開け放ち、一目散に走り出した。
◈◈◈◈
はぁ、はぁっ、はぁっ……
何処に向かってるのかも分からないまま、ただ浸すら走った。あっという間に酸素が足りなくなって、目の前がチカチカする。
吸血後だから、尚更気持ち悪くて仕方がない。
船になんて乗らなければ良かった。
旅行券なんて当てなければ良かった。
後悔の念と恐怖に駆られて、それこそグチャグチャに感情がマーブルされる。あぁ、本当に最悪
やだ、死にたくない
そんな至って単純でシンプルな言葉だけが頭に浮かんでは消えていく。うらたさんは迫ってきてるのか。振り返りたい欲求を抑え込んで、廊下の突き当りの階段を駆け下りた。
遠近法で開けたシンメトリーの廊下が広がる。
いや、広がる筈だった。左右対称の部屋を邪魔したのは一つのドア。誰かが閉め忘れたのか、開けっ放しになっていた
足が覚束なくなって、倒れそうになる。
もう無理だと、タイミングを図ったように体が悲鳴をあげた
抑え込んだ欲求の枷を外して、振り向く。恐怖の白い翼は見えなかった。休もう。休まなくちゃ。これ以上走ったら、酸欠で死んでしまう
今にも崩れそうになる足を引き摺り、部屋を目指す。居ることがバレないようにドアを閉め、室内の奥へと入り込む
「はぁっ……」
壁に凭れ掛かるように座り、苦しくて喘いだ。休もうと目を瞑るも、それを偶然にも耳が拾った水音が邪魔した
ゆっくりと視線を落とし、広がる鮮血。それが自分の腕から流れ出たモノだと知るのに少し時間がかかった
瞬く内にカーペットに赤い汚れをつけ始めて、やっと、止めなくてはと思った。
でも、掌で抑えるも止まらない。シーツで抑えるも切れた血管が悪かったのか、ドクドクと血は流れるままだ。
(止血……できない)
どんどん広がる血溜まりと薄れていく意識に焦りを死への焦りを感じた。やだ、死にたくない
そして、死にかけた私に追い打ちをかけるようにハイトーンボイスが響く。
「ここに居ったんか」
いつからそこに立っていたのか、僵尸が私を見下ろしていた
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ユン(プロフ) - LiLi Kaさん» コメントありがとうございます！拘っていた所だったので、気づいていただけて、とても嬉しいです！！ LiLi Kaさんの仰る通り、濃いめの青にしてみました！！ (2020年6月16日 0時) (
レス) id: ca6f64574e (このIDを非表示/違反報告)
LiLi Ka(プロフ) - 惨めのところ色違う？濃い青みたいに見える…もしわざとなら主人様のセンス光ってる！ (2020年6月15日 20時) (レス) id: ef0b88e85e (このIDを非表示/違反報告)
ユン(プロフ) - tamaさん» コメント、応援ありがとうございます！そう言って頂けてとても嬉しいです！！よかったら、主人公ちゃんと4人の行方を見守ってあげてください！笑 (2020年6月9日 10時) (レス) id: ca6f64574e (このIDを非表示/違反報告)
tama(プロフ) - この作品、とても好きです！応援してます！ (2020年6月8日 23時) (レス) id: 38d6d4018c (このIDを非表示/違反報告)
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