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逃げなきゃ、そう思うのがまた遅かった。
気づいた時には逃げ場なんて物は無く、あるのは強欲な赤みで染められていくエメラルド。
背中と共に壁に貼り付けにされた腕から、流れ落ちていく鮮やかな血を見せつける様に舌で掬い取る。先程と何ら変わらない吸血だったけれど、それに妙に寒気を覚えた。
逃げないと、逃げないと危ない。
どうにかして離れようと身じろぎをするも、簡単に押さえつけれる。彼は構わず、上から下まで私をじっくりと眺めた後、空いた手で私の右耳に指をかけ、吐息みたいな声を漏らした。
「俺、お前が欲しい」
「ぇ…」
「腕も耳も、足も………心臓も肝臓も、子宮も全部全部俺が欲しい。血も俺が全部吸い尽くして、殺したい」
右耳にかけられた細い指が触れるか触れないか、ギリギリのラインを撫でて、どんどん下へ下がっていく。
かつて味わった事のない、ゾクゾクとした感触に襲われて、身が疼いた。嫌……と首を横に振ると彼はより満足そうに微笑む。
「その顔すごく良い、やっぱ、ただ食べるじゃ足りないわ。……あ、じゃあさ、本番の前にさ、俺と交じわろーよ。16歳だし、ハジメテだよね?」
唖然として、何も答えられなかった。
つまり、それって死に間際に肉体関係を持てって事?好きでもない人と?
「俺のでお前の事を満たして、痛みと気持ち良さで、何も感じないくらいにグチャグチャにしてから、俺が食べてあげる。ね、いいでしょ」
「い、や……」
「嫌?なんで?」
「貴方の事、好きじゃない」
「好きじゃなくてもいいじゃん。気持ちいいのには変わんないし、俺もお前も欲を満たせてからハロウィンを終えられるんだから」
志麻さんの時とは違う恐怖を覚えた。幾ら恋愛に乏しい私でも彼の言う事がどういう事かは分かる。勿論、それが愛故の行動でない事も…
その時、腕に激痛が走った。
内側から抉られる様なその痛みにありったけの感覚が喉の奥から競り上がり、悲鳴になって溢れる。
吸血された腕の傷口が広がっている。また、彼のマニキュアに赤い血の塊みたいなのが見えて、爪で引っ掻かれたんだと気づいた。
「悲鳴もサイコー、益々欲しくなったわ。やっぱハロウィンの終わりまで待てない。この首、今すぐに掻き切って、それから……、ッ!!」
そこまで呟いて、急にうらたさんが苦しそうに頭を抱え込み、後ろに吹き飛んだ。
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ユン(プロフ) - LiLi Kaさん» コメントありがとうございます!拘っていた所だったので、気づいていただけて、とても嬉しいです!! LiLi Kaさんの仰る通り、濃いめの青にしてみました!! (2020年6月16日 0時) (レス) id: ca6f64574e (このIDを非表示/違反報告)
LiLi Ka(プロフ) - 惨めのところ色違う?濃い青みたいに見える…もしわざとなら主人様のセンス光ってる! (2020年6月15日 20時) (レス) id: ef0b88e85e (このIDを非表示/違反報告)
ユン(プロフ) - tamaさん» コメント、応援ありがとうございます!そう言って頂けてとても嬉しいです!!よかったら、主人公ちゃんと4人の行方を見守ってあげてください!笑 (2020年6月9日 10時) (レス) id: ca6f64574e (このIDを非表示/違反報告)
tama(プロフ) - この作品、とても好きです!応援してます! (2020年6月8日 23時) (レス) id: 38d6d4018c (このIDを非表示/違反報告)
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