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手首を離し、うらたさんが私の肩に手を伸ばしたので、慌ててそれを掴んで止めた。
「あの……首からは、いやです」
「なら、どっからなら良いんだよ」
「腕とか……、首と肩以外なら」
うらたさんは心底不満そうな顔をしたけれど、私がどうしても嫌だと縋ると納得してくれた。
二回の吸血のせいで、私の中で血を首周りから吸われる事に対しての恐怖心ができていたようで、思い出すと体が震える。
麻酔が効いて痛くないと言われても、もう首から吸われるのは御免です。
「じゃ腕出せ」
言われた通り、左腕を彼の前に差し出すとうらたさんは片手で支えるようにして、もう片方の手でそれを撫でた。
品定めをするみたいにエメラルドが私の腕を見つめる。多分、どの血管が良いか選んでいるんだろう。
血管によって血の味が変わるものなのかな?
試してみようとは思わないけど、少し気になった。
「んじゃ、いただきまぁーす」
品定めが終わったのか、カプッと私の腕にうらたさんが吸い付く。犬歯と肌の間にできた小さな隙間から、じんわりと血が滲み出てくるのが見えた。
血が出ているのに、痛くない。
なんだか不思議な感じだけれど、麻酔が効いているみたいでよかった。
うらたさんは時々角度を変えて、その零れ出た血も一滴も逃さないように舐めている。
前に読んだ小説で、人外の主人公が血は命の薬だから、大切にしないといけない、と主人公の師匠に教えられているシーンがあったのを思い出す。
もしかしたら、うらたさんもそうなのかもしれない。丁寧に吸血をする姿からはそんな事が感じられた。
「うらたさ……」
「っお前、喋んな」
そろそろ終わりで、と言おうとして、声をかけるとギロリと睨まれた。その瞳が赤みを帯びていて、見覚えのあるそれに背筋が寒くなる。
その形の良い唇から垂れた血を拭って、うらたさんは「ねぇ」と熱を含んだ声を出した。
「もしかして、まーしぃに何か盛られた?」
「へっ…?」
「尋常じゃないくらいに、甘いんだけど……催 淫系の薬とか、何か盛られてんじゃ」
志麻さんの言葉が頭にリピートした。確か、あの時、銃弾のペナルティが何とかって言ってた気がする。
「薬盛った後の血って、すげー甘くなんだよ。だから、血を吸う、魔物にとっては、結構、理性保つの、キツ…」
そこまで言って、うらたさんは私の目を見た。その頬は紅潮していて、目は赤く、ギラギラとしていた。
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ユン(プロフ) - LiLi Kaさん» コメントありがとうございます!拘っていた所だったので、気づいていただけて、とても嬉しいです!! LiLi Kaさんの仰る通り、濃いめの青にしてみました!! (2020年6月16日 0時) (レス) id: ca6f64574e (このIDを非表示/違反報告)
LiLi Ka(プロフ) - 惨めのところ色違う?濃い青みたいに見える…もしわざとなら主人様のセンス光ってる! (2020年6月15日 20時) (レス) id: ef0b88e85e (このIDを非表示/違反報告)
ユン(プロフ) - tamaさん» コメント、応援ありがとうございます!そう言って頂けてとても嬉しいです!!よかったら、主人公ちゃんと4人の行方を見守ってあげてください!笑 (2020年6月9日 10時) (レス) id: ca6f64574e (このIDを非表示/違反報告)
tama(プロフ) - この作品、とても好きです!応援してます! (2020年6月8日 23時) (レス) id: 38d6d4018c (このIDを非表示/違反報告)
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