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志麻さんが気を失った後、堕天使は私を横抱きにし、廊下に出た。たった二本の腕で体を支えられるのは、あまりにも不安定で凄く怖い。


だから、何処に向かっているのかを聞く余裕はなく、不本意ながらも落ちないようにしがみついているのに必死だった。




不意に、堕天使が歩くのを止めた。どうやら目的地に到着したらしい。部屋に入るとそのまま、私を丁度そこにあったベッドにおろした。


見覚えのある風景と捲られたままのシーツがあった。ここは……私の部屋?



「ちょっと大人しくしてろよ」



堕天使が私の首筋に手を翳す。志麻さんに噛まれた箇所だった。あまりよく見えないけれど、魔法をかけているようだ。

ぽぅっと輝いたソコから、全身に血が巡るような、冷えた体が温まるような感覚がする。


暫くして、堕天使が手を離して、私を見た。「首筋」と小さく呟いて、顎を向ける。恐る恐る首筋に触れてみると、吸われた傷は無く、血も止まっていた。



治して、くれたのか。

彼にほんの少しの安心感を覚えた。この人は意外といい人かもしれない。



「えっと……」

「うらた」

「う、うらたさん、ありがとうございます」



ぺこりと頭を下げるとうらたさんはフンと鼻を鳴らした。



「で?」

「……はっ?」



ポカンとする私にうらたさんはチッと舌打ちをした。え、私何かした?お礼を言っただけなんだけどな……



「血、欲しい」



グイッと引っ張られて、また倒れそうになる。吃驚して見上げると、彼はその翠のエメラルドを細めて、掴んだ手首に唇を近づけた。



「輸血も止血もしてやったんだし、少しくらいいいだろ?」

「ひぇっ」



声と一緒に生温かい息が吹きかけられて、ビクリとしてしまった。それが面白かったのか、キスをするみたいに唇を当てて、肌に這わせる。

その擽ったい感覚に、体の奥がむずむずとした。



「甘ぁ……、肌がこんな甘いなら、血は格別だろうなぁ。そりゃあ、まーしぃも坂田も止まらなくなるねぇ」

「っひ、や、めてくださ…」

「ん、じゃあ血ィ頂戴よ。それならやめてあげてもいいけど?」




うっ、と言葉に詰まる。本音を言えば、断りたい。志麻さんに吸われたばかりだから嫌に決まってる。でも、さっきからの体の奥が疼くピリピリとした感覚も耐えられなくて……


私は止むなく頷いた。

○→←3.翠の恩送り



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設定タグ:浦島坂田船 , グリムメイカー   
作品ジャンル:ファンタジー
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ユン(プロフ) - LiLi Kaさん» コメントありがとうございます!拘っていた所だったので、気づいていただけて、とても嬉しいです!! LiLi Kaさんの仰る通り、濃いめの青にしてみました!! (2020年6月16日 0時) (レス) id: ca6f64574e (このIDを非表示/違反報告)
LiLi Ka(プロフ) - 惨めのところ色違う?濃い青みたいに見える…もしわざとなら主人様のセンス光ってる! (2020年6月15日 20時) (レス) id: ef0b88e85e (このIDを非表示/違反報告)
ユン(プロフ) - tamaさん» コメント、応援ありがとうございます!そう言って頂けてとても嬉しいです!!よかったら、主人公ちゃんと4人の行方を見守ってあげてください!笑 (2020年6月9日 10時) (レス) id: ca6f64574e (このIDを非表示/違反報告)
tama(プロフ) - この作品、とても好きです!応援してます! (2020年6月8日 23時) (レス) id: 38d6d4018c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユン | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年5月28日 13時

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