○ ページ11
志麻さんが気を失った後、堕天使は私を横抱きにし、廊下に出た。たった二本の腕で体を支えられるのは、あまりにも不安定で凄く怖い。
だから、何処に向かっているのかを聞く余裕はなく、不本意ながらも落ちないようにしがみついているのに必死だった。
不意に、堕天使が歩くのを止めた。どうやら目的地に到着したらしい。部屋に入るとそのまま、私を丁度そこにあったベッドにおろした。
見覚えのある風景と捲られたままのシーツがあった。ここは……私の部屋?
「ちょっと大人しくしてろよ」
堕天使が私の首筋に手を翳す。志麻さんに噛まれた箇所だった。あまりよく見えないけれど、魔法をかけているようだ。
ぽぅっと輝いたソコから、全身に血が巡るような、冷えた体が温まるような感覚がする。
暫くして、堕天使が手を離して、私を見た。「首筋」と小さく呟いて、顎を向ける。恐る恐る首筋に触れてみると、吸われた傷は無く、血も止まっていた。
治して、くれたのか。
彼にほんの少しの安心感を覚えた。この人は意外といい人かもしれない。
「えっと……」
「うらた」
「う、うらたさん、ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げるとうらたさんはフンと鼻を鳴らした。
「で?」
「……はっ?」
ポカンとする私にうらたさんはチッと舌打ちをした。え、私何かした?お礼を言っただけなんだけどな……
「血、欲しい」
グイッと引っ張られて、また倒れそうになる。吃驚して見上げると、彼はその翠のエメラルドを細めて、掴んだ手首に唇を近づけた。
「輸血も止血もしてやったんだし、少しくらいいいだろ?」
「ひぇっ」
声と一緒に生温かい息が吹きかけられて、ビクリとしてしまった。それが面白かったのか、キスをするみたいに唇を当てて、肌に這わせる。
その擽ったい感覚に、体の奥がむずむずとした。
「甘ぁ……、肌がこんな甘いなら、血は格別だろうなぁ。そりゃあ、まーしぃも坂田も止まらなくなるねぇ」
「っひ、や、めてくださ…」
「ん、じゃあ血ィ頂戴よ。それならやめてあげてもいいけど?」
うっ、と言葉に詰まる。本音を言えば、断りたい。志麻さんに吸われたばかりだから嫌に決まってる。でも、さっきからの体の奥が疼くピリピリとした感覚も耐えられなくて……
私は止むなく頷いた。
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ユン(プロフ) - LiLi Kaさん» コメントありがとうございます!拘っていた所だったので、気づいていただけて、とても嬉しいです!! LiLi Kaさんの仰る通り、濃いめの青にしてみました!! (2020年6月16日 0時) (レス) id: ca6f64574e (このIDを非表示/違反報告)
LiLi Ka(プロフ) - 惨めのところ色違う?濃い青みたいに見える…もしわざとなら主人様のセンス光ってる! (2020年6月15日 20時) (レス) id: ef0b88e85e (このIDを非表示/違反報告)
ユン(プロフ) - tamaさん» コメント、応援ありがとうございます!そう言って頂けてとても嬉しいです!!よかったら、主人公ちゃんと4人の行方を見守ってあげてください!笑 (2020年6月9日 10時) (レス) id: ca6f64574e (このIDを非表示/違反報告)
tama(プロフ) - この作品、とても好きです!応援してます! (2020年6月8日 23時) (レス) id: 38d6d4018c (このIDを非表示/違反報告)
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