2.紫紺の要望 ページ6
光源のない廊下は暗くて、目が慣れるのにそこそこの時間がかかった。昼間のモノとは大きく違い、美しい装飾が鈍い光を帯び、不気味に見える。ホラーゲームなんかで有りそうな雰囲気に背筋が寒くなった。
本当は怖くて仕方がなかったけれど、部屋にいて、魔物が血を吸いに来ても嫌なので、船の中を探索する事にした。勿論、遭遇しないように気をつけながら、だけど
ボートとか、ないのかなぁ…
せめて、何処かに小舟があれば、いくつか問題はあるにせよ、取りあえずは客船から抜け出す事はできる。
キョロキョロと辺りを見回していると船内が変化している事に気がついた。
船の廊下は学校と同じくらいの長さに上手く縮まり、ダンスホールやプール、娯楽場は確かに跡形も無く姿を隠している。どうやら本当に魔法で消してしまったようだ。
けれど、消されていない施設もあった様で、図書館やテラスに出る第3ゲームを行ったあの広間なんかは残っていたので、少しホッとした。ちょっとは魔物にも趣があるみたいで良かった。
一応この船のファンとして、目玉商品の施設が全部消えているのは心苦しい限りなので、2,3個でも形があると、なんだか安心する。
「あれ、行き止まり?」
ふらふらと彷徨い歩き続けていると丁度廊下の端に差し当たった。ここから先には何もないみたいだ。しょうがない、戻ろう…
踵を返し、元きた道を戻る。同じデザインの船室の扉の1つの前をまた通り過ぎようとした瞬間、扉が開いて、何かに腕を掴まれて中に引き込まれた。突然の事に恐怖に染まった悲鳴をあげると自分の物ではない声が降ってきた。
「んー、やっぱいい反応するねぇ」
見覚えのある紫水晶が見えて、部屋の中がふわりと明るくなり、その人物を表した。紫の迷彩服に、紫のヘルメット…
「志麻、さん…?」
「おう、数時間ぶりやんなぁ」
にやりとする彼に少し恐怖を感じながら、「何か用ですか?」と声を絞り出した。彼は三日月の様な笑みを浮かべたまま、平然として答える
「用って、1つに決まってるやろ。血ィよこせ」
さっと顔を強張らせて、扉の方へ後退るとすぐさま彼は扉に手を向けて、鍵をかけるような仕草をした。カチャンという音が部屋に籠もる。……鍵を閉められた。
拒否権はない、と言いたいんだろう。
「別に麻酔が効くからイタくないで?
なァ、Aちゃん。ええよな?」
そう言った彼の目は赤く光っていた。
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ユン(プロフ) - LiLi Kaさん» コメントありがとうございます!拘っていた所だったので、気づいていただけて、とても嬉しいです!! LiLi Kaさんの仰る通り、濃いめの青にしてみました!! (2020年6月16日 0時) (レス) id: ca6f64574e (このIDを非表示/違反報告)
LiLi Ka(プロフ) - 惨めのところ色違う?濃い青みたいに見える…もしわざとなら主人様のセンス光ってる! (2020年6月15日 20時) (レス) id: ef0b88e85e (このIDを非表示/違反報告)
ユン(プロフ) - tamaさん» コメント、応援ありがとうございます!そう言って頂けてとても嬉しいです!!よかったら、主人公ちゃんと4人の行方を見守ってあげてください!笑 (2020年6月9日 10時) (レス) id: ca6f64574e (このIDを非表示/違反報告)
tama(プロフ) - この作品、とても好きです!応援してます! (2020年6月8日 23時) (レス) id: 38d6d4018c (このIDを非表示/違反報告)
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