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「はい、そこまで」
「っうぇ?!センラ?」
私に撃ち込まれた謎の弾薬のえげつない正体を淡々と語った坂田さん。止まらず、私を実験台にした魔法薬作りの段取り説明が始まるかと観念した矢先に救いの手が現れた。
「アンタ等何しとんですか。
人間の年で言うなら爺に等しい大の大人三人がこんな子供を虐めて……」
「俺は爺やないっ!」
「別に、虐めたからって血や肉が減るもんじゃないだろ?何の不満があんだよ」
「そうだそうだー!」
ぶーぶーと文句を言う三人に、小さく溜息をつくと彼は私に近寄り、「立てる?」と尋ねた。
頷いて体制を整えようとするも、目の前が揺らいでふらつく。倒れそうになるのをセンラさんが抱きとめて、しっかりと立たせてくれた。
「あ、すみません…」
「ん、別にええよ」
衝動で謝るも、彼はふっと微笑んだ。心無しかその笑顔に安心してしまう。
魔法か何か使ってるのかな……?
気恥ずかしくなって思わず視線を逸すと、不機嫌そうなうらたさんの声がした。
「随分と人間ちゃんに優しいじゃん。何情でも沸いちゃってる訳?」
「別に。そんなんとちゃいますよ。
人間は僕等と違って遥かに力が無い生き物やし、下手に扱うと簡単に死んでまうでしょ?」
「はぁ、無い感情を与えるだけ無駄だと思うけど。死ぬも結局は俺等が喰うんだし」
噛み付く様に言ううらたさんに、センラさんは少し言葉を選んでから答えた。
「その時にAの自我が無くなっとって、つまらん思いをしても知りませんよ」
つまらん思い、がどういう意味なのかは分からなかった。でも、うらたさんには効いたらしい。
チッと軽く舌打ちをし、顔を背けて私の前から離れる。
「サッサと魔界からの伝達読むぞ。お前等、全員席に座れ」
「ラジャーッ!」
「ほら、Aもこっちへ。これからの事、気になるやろ?」
……私は、ここに居ていいんだろうか。
不安になってセンラさんを見ると彼は「おいで」と自身の隣を叩いた。少し躊躇いはあるもののソファに腰をおろす。
こんな時でも乗客サービスたっぷりの椅子のフカフカさが、ちょっと恨めしい。
俯いているとセンラさんが私にそっと耳打ちをした。
「心配せんでも今は誰も血を吸わんよ。あったとしても、僕が手を出させん様にするから、安心しぃ」
そして、私の額に張り付いた髪を退けて、また頬を緩ませた。
彼の微笑みはやっぱり優しいままだった。
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ユン(プロフ) - LiLi Kaさん» コメントありがとうございます!拘っていた所だったので、気づいていただけて、とても嬉しいです!! LiLi Kaさんの仰る通り、濃いめの青にしてみました!! (2020年6月16日 0時) (レス) id: ca6f64574e (このIDを非表示/違反報告)
LiLi Ka(プロフ) - 惨めのところ色違う?濃い青みたいに見える…もしわざとなら主人様のセンス光ってる! (2020年6月15日 20時) (レス) id: ef0b88e85e (このIDを非表示/違反報告)
ユン(プロフ) - tamaさん» コメント、応援ありがとうございます!そう言って頂けてとても嬉しいです!!よかったら、主人公ちゃんと4人の行方を見守ってあげてください!笑 (2020年6月9日 10時) (レス) id: ca6f64574e (このIDを非表示/違反報告)
tama(プロフ) - この作品、とても好きです!応援してます! (2020年6月8日 23時) (レス) id: 38d6d4018c (このIDを非表示/違反報告)
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