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ついにコンサート当日。
団扇…ある、ペンラ…ある、双眼鏡…ある。
持ち物の確認もして、昨日調達した服を着て、
お昼過ぎには会場へと向かった。
今は1公演目の最中。
数時間後には私も…なんて思うと、楽しみでしかない。
夢だったんじゃないかと思うくらい、
緊張で昨日の事はあんまり覚えてなくて。
新しい友だちの欄にある"中村海人"という文字が、
昨日の事が現実だった事を告げている。
お礼の言葉を送ろうと思ったけど、相手はあのうみくん。
むやみに連絡するものじゃないと思い、
代わりに悠誠くんに伝言を頼んだ。
会場近くのカフェで遅めのランチを食べていると、
楽しかったね、という言葉と共に女の子達が店内に入ってきた。
その子達は近くの席に座り、会話が始まった。
｢今日のうみんちゅめっちゃ機嫌良くなかった！？｣
｢だよね！ファンサの量えぐかった…｣
｢あたし干されかけたけど、トロッコ通り過ぎた瞬間に振り返ってくれて…｣
恐らく1公演目に入ってただろうという会話。
不意に鳴ったスマホ。
表示された文字は"中村海人"
咄嗟にスマホを抱え、気付かれてないかと周りを見渡してしまった。
"もはよ〜"
"1公演目終わったよ〜"
とらまるで見てた様な文面に少し笑ってしまった。
既読付けてしまったし、このままスルーするのも気が引ける。
"お疲れさまです"
"2公演目までゆっくり休んで下さいね"
当たり障りのない、至って普通の文章。
開場時間が近付いてきたので、会計を済ませてカフェを後にした。
.
この時間が一番緊張するかもしれない。
発券機がある入口まで続く長い入場列。
さっき何かの通知が来た気がするけど、
今はQRコードを表示させておかなければいけない。
｢1名様ですね｣ ……ﾋﾟｯ
［1階スタンド ○ブロック 1列 ○番］
ひょっとして神席きたんじゃない、これ…！？
これは本当に運使い切ったかもしれない。
｢会場内携帯電話のご使用禁止となっております、
ご協力お願い致します｣
会場スタッフさんの声が辺りに響く。
…あ、そういえばさっき通知来てたんだ。
一旦ロビーに出て確認する事にした。
"もう会場着いた？"
"絶対見つけるからね〜"
"それと、楽しんでね"
表示される"中村海人"の文字には慣れない。
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作者名：れおな | 作成日時：2023年2月12日 9時
