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駅に向かう途中、私の隣をうみくんが歩く。
中村「Aちゃんどの辺に住んでるの?」
『あ、○✕の辺だよ』
中村「そっか、……もう遅いし送ってく、」
遅いと言ってもまだ22時。
『そこまでしてくれなくて大丈夫だよ』
先程聞いた話では、うみくんは松倉くんと近所。
美咲もその最寄り駅だと聞いている。
私の降りる駅よりもここから数駅近い場所。
わざわざ遠回りになる事をしてもらうわけにはいかない。
それなのに。
中村「だーめ、もし何かあったら俺が嫌だから」
何度断っても、うみくんは折れてくれなくて。
申し訳ない気持ちを抱きながら、
私はうみくんの厚意を受け取る事にした。
駅に着いたと同時にタイミング良く電車がホームに入ってきた。
みんな同じ方向で、一緒に電車に乗り込んだ。
まだまだ終電には余裕がある時刻。
差程混んでない車内だけど、座席はほぼ空いてなくて。
私たちは揃ってドア付近に立つ事にした。
声を抑えながら笑い合う美咲と松倉くん。
静かにスマホを弄る宮近くん。
ぼーっと窓の外を眺めていると、ふいに窓に映るうみくんと目が合った。
中村「外見て楽しい?笑」
『いや、何かつい癖で……』
あまり背が高くない私は普段から手すりのあるドア付近に立つ事が多い。
だから、いつもの調子で外を眺めていただけ。
中村「じゃあ、今は俺と話そ?
もちろん小声でね、」
自分の口元に人差し指を当てて、しーって笑ううみくん。
お互いの趣味とか、
休日は何してる、とか。
そんな何でもない話をしてると、普段はうみくんの最寄り駅でもある駅に着く。
美咲、松倉くん、宮近くんがホームに出て行く中、私の隣に立ったままのうみくん。
松倉「あれ、海人降りねーの!?」
不思議そうに松倉くんが問う。
中村「ちょっとね、……ほら、察しろよ」
松倉「……あ、あぁ!了解!またな!」
美咲「中村、Aの事よろしくね!」
中村「お任せ下さい笑」
宮近「海人じゃあな、……Aさんもまた、」
『はい、また月曜日に』
ドアが閉まるまでの数十秒の会話。
閉まってからもホームで手を振る三人に手を振り返した。
中村「……あ、そうだ。
Aちゃん連絡先交換しよ、」
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作者名:れおな | 作成日時:2020年12月10日 6時