《32》 ページ33
_
宮近「…じゃあ、おつかれー」
その言葉と共に二人でジョッキを鳴らした。
ぐいーっと一気に半分くらいまで飲めば、向かい側から聞こえた笑い声。
宮近「Aさん俺よりいい飲みっぷり笑」
大きく口を開けて笑う宮近くん。
え、そんな笑う?
『宮近くん笑い過ぎです…!』
何だか少し恥ずかしくなってきて、俯きながらそう言った。
宮近「…あ、ごめんごめん!
変とかそんなんじゃなくて、………」
謝罪の言葉の後、宮近くんは続けた。
宮近「Aさんが可愛いなーと思って、」
"可愛い"という言葉にびっくりして顔を上げれば、さっきまでとは違う優しい笑顔を見せた宮近くん。
その笑顔を見ると妙に心臓がドキドキして。
頬が熱くなるのがわかった。
一気にアルコールを入れたせいかな。
アルコールのせいじゃないって本当は気付き始めている。
少しだけ、宮近くんという存在を意識してる。
二人の間に流れた少しの沈黙。
周りの雑踏なんて全然耳に入らなくて。
宮近くんと視線が重なるとより一層鼓動が早くなった。
タイミング良く料理が運ばれてきて、さっきまでの空気は少し崩れた。
宮近「お、うまそー
ほら、Aさんも食べよ?」
『あ、はい!』
しばらくの間私の心臓はドキドキしたままだった。
宮近「そういえば、……海人とはどうなの?」
『うみくん…ですか、』
どう、とは…?
突然のうみくんの話題にどう答えればいいのかわからなくて。
どこまで宮近くんに話していいのかもわからなくて。
1ヶ月前くらいに告白されて。
たまに遊びに行ったり、呑みに行ったりはしている。
俺の事を意識してほしいって、気持ちを伝えてくれたけど。
でも、それから告白についてうみくんが触れてくる事は無くて。
夢だったのかな、なんてたまに思うくらいにいつも通りで。
でも時折見せてくれる女の子扱いが擽ったくて。
少なからずうみくんを意識してるのも事実で。
宮近くんは何か聞いてるのかもしれない。
だけど私が口にするのは違うと思った。
『特に何もないですよ』
迷った末、さっきの質問に対してそう答えた。
_
916人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:れおな | 作成日時:2020年12月10日 6時