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中村「どっち?」
『あ、こっち』
駅を出てすぐの分かれ道。
指を差しながら自分の家の方向を伝える。
『わざわざごめんね、』
中村「何が?」
『だって、遠回りになっちゃうでしょ?』
中村「あー、そんな事…
俺がしたくてしてるからいーの」
自然と隣を歩くうみくん。
仕事が始まってこの時間にこの道を歩くのは初めてで。
少し薄暗く人通りが少なくなった道。
やっぱりうみくんが来てくれて良かったかも…なんて。
中村「ごめんより、ありがとうのが嬉しいかな」
『うん、…ありがとう』
どういたしましてー、なんて優しく笑いながら、大きな手が頭に乗せられそのまま撫でられた。
15分程歩くと見えてくるどこにでもあるようなマンション。
5分くらいの場所にはコンビニもあって結構便利。
『うみくん、本当にありがとうね』
中村「いえいえ、これくらいなんて事ないよ
……じゃあ、またね」
来た道を戻って行くうみくんを見送るように眺めていた。
するとすぐにこちらを向き直し、小走りで戻ってきた。
『どうしたの?』
中村「明後日、………日曜、空いてる?」
『日曜…?』
確か何も予定はなかったはず。
そう伝えると、
中村「じゃあ空けといて、遊びに行こ」
突然のお誘い。
今日は楽しかったし、もっと仲良くなりたいと思った。
『あ、うん!他に…「二人で、」』
誰か誘う?と言いかけた時、私の言葉はすぐに遮られた。
中村「……俺と二人は、嫌?」
『ううん、そんな事は…』
中村「よし、決まり!また連絡する!」
うみくんは笑顔で手を振りながら、再び駅へと続く道を戻って行った。
部屋に入り、少し酔った身体を覚ますようにすぐにシャワーを浴びた。
部屋着に着替え、冷蔵庫を開けると空っぽで。
水すら無いとか……
コンビニ近いしこのままでいっか。
薄手の上着だけ羽織り、コンビニへと向かった。
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ドリンクコーナーへ向かう途中、ふと目に入った雑誌コーナー。
日曜何着て行こう……
パラパラとファッション誌をめくり、自分が持っている服を頭に浮かべながら考える。
不意に顔を上げると、コンビニに入ろうとしていた彼と目が合った。
何でこんな所に……?
そんな疑問を持ちつつ、雑誌を閉じて私も入口に向かった。
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作者名:れおな | 作成日時:2020年12月10日 6時