神様拾参 ページ14
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有一郎の出血は酷く、かなり弱っていた。無一郎の姿は見当たらない。
「待ってて、すぐ助けを…」
子供の自分に出来る事はないとすぐさま判断した桑島は、助けを呼びに行こうとした。だが、それは有一郎に止められた。くん、と弱く服を引っ張った有一郎の片手。
「A……、…ご、め……いつも、冷た…くて…」
「そ、そんなの後でいいから!」
「でも…あのままだったら……Aが…壊、れるから………」
「え…」
「無、一郎はきっと……強くなれる……だから……そのうちにAは…離れて……」
有一郎は、無一郎が桑島にべったりだったことを心配していたのだ。久しぶりに感じた有一郎の優しさに涙が溢れてきた。
有一郎を抱き締める。駄目だ。自分が泣いたら不安になってしまうじゃないか。そう分かっていても、背中に回された一つの体温を感じて更に涙が止まらなくなった。
今度こそ助けを呼ぼうと立ち上がると、戸の方からガタっと音がして咄嗟に振り返った。そこには這いつくばった状態の無一郎がいた。
無一郎は桑島に目もくれる事なく、実の兄である有一郎の方へ精一杯体を動かしていた。
「…兄さん…」
そこで流れていた記憶は止まって消えた。辺りが真っ暗になる。桑島の体も元に戻っていた。自分の足下にだけ薄明かりが掛かってあった。そしてそれは、眼前にいる時透無一郎の足下にもあった。彼の姿は子供の頃の面影をだいぶ消していた。
無一郎はゆっくりと口を開く。その表情に笑顔は一切かかっていない。
「ねぇ、何で僕を避けるの…?」
「何で神様止めちゃったの?」
「僕だけの神様じゃなかったの?」
首をこてん、と傾げた無一郎。その姿はいなくなった有一郎を演じているようにも見えた。
何も答えられない桑島に無一郎は、あんなに守ってくれてたのに…。と、思い出させるように伝えた。
「僕が…、…忘れたから?僕の記憶がなくなったらAは離れて行くの?」
その瞬間、酷い耳鳴りがして意識が薄らいでいくのが分かった。
無一郎は微かに口角を上げ
ハ ク ジ ョ ウ
そう唇を動かしていたのを最後に見た。
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パプタピ - ねむりねこさん» こちらこそコメントありがとうございます!今はテスト期間なので作るのは遅くなると思いますが、待っていて下さると幸いです!あと、別の端末から送ったため名前が違うんですけど、あんまり気にしないで下さい。 (2019年11月13日 19時) (レス) id: 36c4c5cb96 (このIDを非表示/違反報告)
ねむりねこ(プロフ) - 返信ありがとうございます!次回作、楽しみにしております!!! (2019年11月13日 15時) (レス) id: b1690d9a63 (このIDを非表示/違反報告)
カルビ - ねむりねこさん» ご愛読ありがとうございましす!薄情でハクジョウって読むんですね、ご指摘感謝します。確かに薄情者!って言いますもんね…。もう本当、作者のポンコツぶりが、どんどん暴かれていく…(震)次回作品も応援お願いします! (2019年11月13日 15時) (レス) id: 36c4c5cb96 (このIDを非表示/違反報告)
ねむりねこ(プロフ) - 鬼滅亡…………… (2019年11月13日 9時) (レス) id: b1690d9a63 (このIDを非表示/違反報告)
ねむりねこ(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいています!一つ気になったのですが、薄情はハクジョウと読みます!水を差してしまってごめんなさい、応援してます! (2019年11月13日 9時) (レス) id: b1690d9a63 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:パプタピ | 作成日時:2019年11月7日 18時