身代わり大尉の帝国奮闘記【wrwrd】【d!】 (ページ8)

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そんな状況下で身代わりとして帝国に行くとこに否定を述べることは出来なかった。

あの日私、A・リーシェンとしての存在が消えた日のことは今でも鮮明に覚えている。
とても静かな夜だった。

敗戦国である私たち王国側の上層部は帝国側に提示された内容について話し合いをしている傍ら、大尉の私は執務室で外を眺めていた。何時も城から見えていた姿は荒野と化していていながら、何事もなかったように夜空を照らしている月に目を奪われていた。

その時だった。Aとしての人生の終わりが来たその時が。誰かが執務室の外からのノックをしたのだ。

入室の許可を出すと入ってきたのは中将─、私達空軍の最高権力者である方だった。何時ものフランクな雰囲気は影を潜め、眼下には黒く濃い隈がへばりついていた。
中将はソファに座るとすぐ本題を話した。

──大尉。君に頼みがある
──珍しいですね、中将がここに来るのは。どうされたのでしょうか
──セナ王女の身代わりとして帝国の捕虜となってくれないか
──…捕虜、ですか
──君はそういう役目も担っていたのだろう？今がその時の様だ

私はずっと昔から身代わり、と言う立場に対して理解していたはずだった。私の顔立ちが原因で過去に1度だけ王族との身分を疑われたことがある。

そんな者との接触は避けた方がいい、と周りの官僚達はセナに忠告をしていたが「関係ない。AはAだよ」と親友として私を扱ってくれた。
そんなセナに敬意とはまた別の気持ちを抱いていたし、セナの為なら命を張れるとも思っていた。

しかし、いざセナの代わりとして命を政治事に差し出すことを目の当たりにすると頭ではそれが自分の本望であり幸せなのだという事は分かっている。
いるのだが、体のほうはそれを拒絶していた。

中将が自身の首の裏に手を這わせ、静かに目を伏せて私の発言を待つほどその時の私の反応は酷かったのだ。