身代わり大尉の帝国奮闘記【wrwrd】【d!】 (ページ2)

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大尉、帝国に行くってさページ2

帝国の凱旋を告げる鐘が遠くの教会からカラン、カランと高らかに聞こえる。馬車の中でもそれが聞こえてくるという事は余程の音で奏でられているのだろう。

外から見える人々は肩を抱き合い祝杯の酒を持って今ある幸せを表現している。所謂お祝いムード、と呼ぶべき空間である。
対して車内では啜り泣く従者と着慣れないドレスを纏い外を静かに眺める私だけで空気は最悪である。車内から外に出れば風邪をひくと言っても嘘にならない程温度差があった。

私は今から死へ赴くというのに。外と中で同じ時間が流れているとは到底思えなかった。

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啜り泣いていた従者、もとい部下がやっと涙を引っ込め落ち着きを取り戻した頃には目的地のほぼ目の前まで来ていた。

「ｽﾞｯ……お見苦しい所を見せてしまい申し訳ありません」

「いいよ、気にしてない。私の分まで泣いてくれているようで嬉しかったよ」

そう言われてまた泣きそうになっている相手を見ると少し困ってしまった。今は泣ける気持ちでは無いのだ。どちらかと言うと親友の代わりになれるなら本望と思っていたから。でも部下はこの決断に納得いかなかったようだ。

「上官はなぜ逃げなかったのですか。貴方なら相棒に乗って他国に亡命等することも簡単だったでしょうに」

「うーん…自国の王女に茨の道を歩かせるのを許す程私は愛国心が低い奴じゃないから、かな。」

「納得いきません。例え皇族、ましてご友人であってしても何故上官なのでしょうか！！貴方はいつも空を飛び回り我が国が有利になるような戦況を作ってくれた！！今回だってそうだった！なのに、なのに……」
「なんで上官が身代わりになったんですかぁ…」

せっかく我慢してた涙腺も決壊してしまったようでまた泣き始めた。私に対して強い敬意を持っていたのは知っていたがここまでとは…。

しかしこればかりは譲れない。親友として、忠誠を誓うものとしてはこれが最善策だったのだ。

泣くのを宥めるようにしていたら気づけば帝国の本城の門まで来ていた。部下には申し訳ないがこれを今以上の発言は控えて貰わねばならない。

私がノースリット王国第1王女、セナ・ノースリットの身代わりとしての戦いは既に始まっているのだから。