【ダイヤのA】ああ！あのトキメキをもう一度【御幸一也】

53回裏 ページ8

目線をタブレットに戻してスコアを見る
Aはこういう細かい仕事も自分がいつでも見返せる様にと惜しまない
このタブレットや女王部屋にあるPCには彼女が集めた沢山の情報が詰まっている

そう、俺達には余計な事を考えている暇などない
この関係は俺がAを口説き落として始まった
あいつもそれを理解しているし、この関係を変えるつもりは無いだろう


「隣のクラス、成宮さんいるらしーぜ」

「まじ？去年俺別棟だったからちゃんと見た事ねーんだよな」

「すっげぇ可愛い、あーでも彼氏居るから狙うのはやめとけ」

「え、彼氏って誰？」

「アイツだよ、野球部の御幸」


どいつもこいつも聞こえてんだよ、まぁそういう話は気分がいいのでいくらでもしてくれていーけど


普段の学校生活はフリでいい、だが野球に関しては別だ

昨日の俺が寝坊した件もそうだが、あいつは野球に支障をきたすレベルで他の事に熱中するのを凄く嫌う、特に女関係
多分あれが練習試合のビデオとかなら話は変わっていただろうが、あいつに嘘は通用しないので正直に言った


練習中にも一度あったが、Aと一悶着あった女子が来ている事を伝えたらそれだけで不機嫌になった
理由は「自分がキャッチャーボックスに座っているのに余所見をした」からだ
たったそんだけの事だが、彼女はそれをとても嫌がる
そういう感情が俺だけに向けられているってのはぶっちゃけとても優越感がある

もしそういった感情が他人に向けられたなら、そう考えるだけで面白くねーしめちゃくちゃムカつく
多分Aはそういう感情なんだろう


正直な話、好きとか恋愛感情とかは置いておいてもAが俺以外に少しでも意識が逸れていると腹が立つ
最初は懐いた子猫が他所に行っちまったくらいの感覚だったのに、今となっては目の届く距離に居ねぇと落ち着かねぇ

Aが一週間合宿で居なかった時なんてどうしようかと思った
あいつは平気そうにケロッとして帰ってきたけど


まあともかく、あいつにそんな感情はなくとも、俺には少なからずそういうのがあって、この醜い独占欲もあいつに知られず積もっていくんだよ



「(はぁ〜〜〜、Aの顔見てぇ…)」

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