28回表 ページ7
あれ以来東さんは何故か私をえらく気に入ったようで学校で出会えば何かとお菓子を渡され、部活中に目が合えば改善点を聞かれるようになった
それに伴って私に一線を引いていた二、三年も少しづつアドバイスを聞きに来るようになった
「東さん効果すげー」
「俺らからしたら東さんに正面切って「食べ過ぎです、また練習メニュー増やしますよ？」って言ってるお前がすげーよ」
「いやあの人ほんともうちょい痩せた方がいいよ」
「まぁ、それはそうだけどよ」
毎年恒例の合宿が近付いてきた
部活後に青心寮の食堂にて最近行われた練習試合の映像を見ながらデータ分析していく
そんな中で私はずっとある事が引っかかっていた
「…」
「どうした？難しい顔して」
「え？あ、いやなんでもないよ、一也も一軍入りして控え捕手としてベンチ入りもしたしやることいっぱいだなーって」
「ま、まだスタメン争い終わってねーからな」
「そうそう、私の技術全て教えてるんだからもっと頑張ってもらわないと」
「厳しー女王様だこと」
そう、一也は先日の練習試合にてベンチ入りメンバーに選ばれ先発した後一軍へと昇格したのだ
私が指導に入るようになってから一也の実力はぐんぐんと伸び代を見せていた
元々キャッチャーとしての実力はかなり高かった上に私の技術が上乗せされかなり磨きが掛かっている
本当にその内優くんからスタメンの座を奪ってしまうのでは、と私に思わせる程に彼は成長していた
「でも一也は本当に上手くなったよ」
「…んだよ、急に、ビックリするだろ」
「人がせっかく褒めてるんだから素直に受け取りなさいよ」
「うるせーな…、っ照れんだろ」
「え！？照れてるの？褒められ慣れてないんだー可愛いとこあんじゃん」
「あーあーあーうるせーなー」
時たま見せる一也のこういう年相応な所は結構好きだったりする
顔はかっこいい癖に態度とか反応が可愛かったりするのがツボだ
実は私、ギャップに弱いのかもしれない
そんなやり取りをしていると前の席に座っていた倉持が睨んでいることに気がついた
「おめーら、イチャつくなら他所でやれ」
「可愛い一也くんで遊んでるんだから邪魔しないで」
「ほら倉持はどうだ？可愛げあったりしねーの？」
「いや倉持の何処に可愛い要素あるの、メンチ切られたら私でも足震えちゃうかも」
「喧嘩か？喧嘩売ってんだな？」
「こっわ、ヤンキーはすぐ喧嘩に持ってこうとする」
ほらやっぱり倉持は可愛くないよ
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作者名：とらお | 作成日時：2022年9月14日 23時
