47回表 ページ45
「今のだったら場外持ってかれますよ」
「あ"？」
一触即発、とはこの事
私と早々にバッテリーを組んだのは今大会優勝校のエースナンバーを背負った天月千夏
女子の割には速い球、制球力もある
この人の強みはなんと言ってもストレートと同じ速度で急に曲がるスライダー
なのにこの人、さっきから本気で投げてない
返球と同時にその言葉も投げると、地を這うような声でお返しを貰った
「今大会はそれで打ち取れたかもしれませんが、このチームで戦うのは世界っすよ、体格も体力もパワーも日本人とは別格、甘い球は全部ホームランを覚悟した方がいいです」
「…知ったような口ぶりだね」
「中学で経験してますから、…あと」
「うちの子達なら持っていきますね」と笑って続けると天月さんはもっと顔を歪めた
「さっきから聞いてりゃ、男子野球部とばっか比較してんじゃないわよ！」
「なんでです？サンプルは多い方がいいでしょう、しかも向こうは男子よりでかいヤツもいますし身体が未完成な高校球児より断然飛ばしてきますよ」
「…う、むかつく」
「はっはっはー、どーも！」
「褒めてないわよ！」
やっぱ投手はどいつもこいつも我がつえーなー
「おう成宮！頑張ってるか！」
「太田部長」
「やー、まさか帝光女学院の監督から声がかかるなんてな！我が野球部としても鼻が高いな！」
「なんか色々と大丈夫か？って思うところ多いっすけどね、私呼んだのとか」
「今日は何時に終わるんだ？家まで送るようにと高島先生からも言われているからな」
「19時くらいって聞いてますよ、んで？その高そうなカメラを持たせた高島先生は見学者の相手でしたっけ？」
「ああ、長野で見つけた投手だそうだ」
「と、投手！？聞いてない！！」
「あ、高島先生に言うなと言われて…」
くっそ〜〜〜、ここもいい刺激にはなるが来年入ってくるかもしれない投手をこの私が確認できないのはいただけない！
高島先生も多分気を使って言わなかったのだろうが、めちゃくちゃ悔しい見たかった
「帰ったら絶対聞く、絶対一也はちょっかい出してるだろうし、あ〜〜〜見たかったぁ〜〜〜」
「そ、そんなになのか！？」
太田部長に心配されつつ悔しさを心に秘めつつ私は練習に戻るのだった
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作者名：とらお | 作成日時：2022年9月14日 23時
