30回裏 ページ12
「俺今凄いプレッシャー感じてる」
今度は一也がポツリと話し出した
「クリス先輩とだって正捕手争い、したかった」
「うん、知ってる」
「自分の力で先輩に勝ってからこの背番号、貰いたかった」
「うん」
「先輩みたいに投手陣纏められっかなとか先輩みたいにちゃんとリードできっかなとか色々考えた」
「うん」
「A、俺を見て」
急に強くなった彼の言葉で俯いていた顔を上げる
そこには先程と違って力強い表情で私を見る一也がいた
「お前見たらうだうだ考えてるのが馬鹿らしくなったわ」
「はぁ！？それどういう意味！？」
「そういえば、俺はお前の半身なんだって思い出した」
「…！」
一也は私の握り過ぎて冷たくなった拳を解いてそっと握る
それだけなのに一也の熱がじんわりと伝わって来ているようだった
「俺は、一人じゃねーんだって思い出した、俺にはお前がいる、お前にだって俺がいる、言ったろ？俺達は一心同体だって」
「一也」
「辛い事も悲しい事も楽しい事も嬉しい事も、全部共有してこうぜ、俺達は俺達の野球をしよう」
そうだ、私が落ち込んでどうする
優くんは優くんでまた支えればいい
でも今は、私の半身が夢への第一歩を踏み出そうとしている
自分がこの部に来た理由を思い出せ
その瞬間、何かぐわっとした感情が押し寄せ、勢いに任せて目の前の椅子に座る一也に飛び付いた
「！？ちょ、えっ！！A！？！」
「うん、うん！ありがとう一也！私変にうじうじしてた！大丈夫！もう気持ちで負けないよ！」
「…っふ、はっはっはっ！俺の女王様はこうでなくちゃな！」
オドオドしていた一也の手は私に応えるように私の背中に回った
うん、あったかい、一人じゃない、もう私は大丈夫だ
「…一也お風呂入った？」
「え、おう、変な匂いする？臭い？」
「いや、めちゃくちゃいい匂いでビックリした」
「嗅ぐなよ！！」
「てか私のが汗臭いわ、やっべ」
「いや、気になんねーけど」
「嗅ぐなよ！！！」
そう、私達はいつも通り、勝ちに貪欲で行こう
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 136人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：とらお | 作成日時：2022年9月14日 23時
