□はぁと泥棒□ ページ44
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中学生yb x hk
「八乙女っ」
名前を呼ばれて振り向くと同じクラスのやぶ君がいて急に両肩を掴まれた。
「ねぇ俺に手作りチョコくれない?お願い、作って」
やぶ君は僕の肩を揺さぶりながら訳の分からないことを言い出した。
「えっ…。なんで…?」
「いいからお願い、お願いします!」
今度は顔の前で手を合わせながら神頼み状態だ。
ほんと意味分かんない。
だってバレンタインデーは昨日だったでしょ?
やぶ君女子に人気あるからいっぱい貰ったんじゃないの?
「だからなんで僕が…チョコレートなんて…」
「ねぇお願い、作って下さい、ちゃんとお返しするから。お願いします」
やぶ君､僕の話聞いてない。話が全然噛み合わない。
そんなことより教室に誰かが入って来たらどうするの？誤解されるよ？
騒ぎになるの嫌だなぁ…
「…分かった…。一応作ってみるけど……自信ないけど…」
「やったー」
やぶ君は2階から放ったボールみたいに大きくジャンプしながら出て行ってしまった。
僕が表現したかった渋々承知したんだよってニュアンスは多分伝わってないと思う。
家に帰ってネットで調べて僕でも作れそうなレシピを選んだ。
翌日､僕は色々失敗しながらもなんとかガナッシュを作り上げた。
はっきり言ってあんまり美味しそうに見えないけれど、こんなんでいいのかなぁ…。
次の日の放課後､人気のない校舎裏までやぶ君に来てもらい
「はいこれ…」とチョコレートを手渡した。
くしゃくしゃのアルミ箔に包まれたガナッシュ。
歪なボール型…。
それでもやぶ君は「美味しい、サイコー」って言いながらうれしそうに食べてくれた。
それから「俺この歌好きなんだ」と言ってミスチルの曲を歌い出した。
ちなみにミスチルはやぶ君の推しバンドのひとつだそうでその良さを熱く語ってくれた。
と、ここまでが去年の話だ。
で、今僕の前にはそのやぶ君がにこにこ顔で立っている。
今日はバレンタインデー翌日……。
嫌な予感しかない。
*
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作者名：べす | 作成日時：2022年7月12日 20時
