やぶとひかると恋ほたる (ページ42)

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□探し物はなんですか?□ ページ42

**yb

ないぞないぞ、どこ行った？

俺は今､懸命に探し物をしている。探し始めてすでに1時間。

お目当てはシルバーのピンキーリング
だがただのリングじゃない
あれはひかるとつきあって10年を記念して俺が用意したお揃いのリングで
ーー俺の愛の証なんだ

普段はしまっておいてここぞって時だけはめるし
外で外したりしないから絶対部屋のなかにあるはずなのに
いったいどこに隠れているんだ。くそっ

俺は昔からしょっちゅう物を失くすし見つけるのも下手くそだけど
そんなこと言ってらんないくらいあれは俺にとって大事なもの

もしこのまま見つからなかったら､ひかるまで失いそうな気がして来るし…。
早く見つかれっ

**hk

やぶが自分のクローゼットのなかで何やらゴソゴソしている

しばらくするとやぶがリビングに現れた
見るからに元気がなくてヨロヨロ歩いて来る…何事だ?

「どうしたやぶ」
「ひかるごめん､どうしても見つからないんだ」

やぶは隣りに腰掛けると抱きつくようにおれの胸に顔をうずめた
こんな弱々しいやぶは珍しい

おれはやぶの背中に手をまわし話し出すのを待った

どうやらペアで揃えたピンキーリングが行方不明らしい
「絶対部屋のなかにあるはずなのにどうしても見つからないんだ
大事なものなのにごめん、見つけるの下手でごめん…」と
やぶはシュンとしている

それでこんなに落ち込んでるのか､かわいいな
だけど…、お前､ちょっと違うぞ

「やぶは見つけるの下手じゃないよ」

おれの声に反応してやぶが顔を上げた

「やぶはおれを見つけてくれたじゃん」

随分昔の話だけど､やぶは入所当時から歌が上手いと評判な上
すぐにマイクを持たされても堂々とステージで歌える度胸もあって
先輩たちに特別可愛がられていたらしい。
そんなやぶがある日先輩たちとオーディションビデオを見てて
大勢で踊るかたまりの中から「この子いいね」っておれを指差した
おれを見つけてくれたんだ

「お前らすげぇな、あの時からずっと一緒か？」
たまに仕事先でその場にいた先輩たちに出くわすと
今でも懐かしそうにそのことを話してくれる

やぶがいてくれたら今のおれがある
だからいつだってそばにいるし
お前が失くし物したら一緒に探してやるから心配すんなよ
きっと見つかるさ

だけど…､ちょっと心配なこともある

「おれまで失くさないでくれよな」
「ひかるのことは失くさない自信があります」

ふにゃふにゃの顔でやぶが答えた

♥︎Fin♥︎