やぶとひかると恋ほたる (ページ36)

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□さぁ覚悟を決めて□ ページ36

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久しぶりにひかるから連絡があったんでバイト帰りに訪ねてみれば､
小綺麗な部屋の真ん中で泣き腫らした目をしたひかるがポツリ膝を抱えていた。

あ〜ぁ､やっぱ予想通りだ

俺は心の中でひとつ溜息を吐くとわたあめみたいに柔らかなひかるの髪をポンポンしながら
「どーしたひかる、失恋でもしたかぁ？」と軽い調子で訊ねた。

デリカシーのない言い方したのはワザとなんだけど､案の定､ひかるは俺のことを世界一の人でなし
でも見るような目で睨みつけた。だけど､ものの2秒もしない内に
「聞いてくれよ、やぶ〜」と言って俺の肩に顔を埋めた。

聞けば数ヶ月前から付き合い始めた男が二股しているのが分かって即刻別れを告げたという。
「あっちからつきあってって言ったくせに…。なんでこうなっちゃうんだろう…」

ひかるの恋はいつも長続きしない。
可愛い顔をしているひかるは知らない奴からもよく言い寄られるらしい。だからといって
普通はそう簡単につきあったりしないと思うんだけど､ひかるは超がつくほど惚れっぽいらしく
背が高くてカッコいい奴だったらホイホイOKしてしまう。そしてすぐに別れる。
ここ数年それの繰り返しだ。

そいで別れるとひかるは必ず俺に連絡して来ては
「なんでうまくいかないんだろう」と言って俺の肩で泣く。
毎度毎度同じパターンが繰り返され俺はすっかり慰め役が板についてきた。

だけど､ホントのこと言うと､俺はそんな善人じゃない。

今だって俺はどす黒くて粘っこい澱のようなものを腹の底に溜め込みながら
無防備に寄りかかるひかるの匂いを目いっぱい吸い込んでいる。
それどころかそいつはひかるを裸にしてこのハチミツみたいな甘い匂いを直接味わったんだろうか？…
なんてゲスなことを考えては惨めなくらい身体を熱くしている。
そう､これは紛れもなく醜い嫉妬心だ。

なぁひかる
俺じゃダメか？
俺だって背は高い方だし結構モテるぜ？
それに､俺ならおまえを泣かせたりしない

スキナンダ……オマエガ…
好きなんだ……おまえが…

口に出せない言葉が頭の中をぐるぐる回り出す。
終電の時間まであと30分

今夜､俺は覚悟を決められるだろか。

♥︎fin♥︎
お正月以来の更新でお久しぶりでございます。
もう1話出来ましたのでよろしければどうぞ(^^)