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「帰ろうか？」
「……うん…」
ひかるの手をポケットに入れたままの帰り道
相変わらず凍えそうな夜だけど
こうしていると心はなんだかあったかい
ひかるもそう思ってくれてたらうれしいな
「なぁ、今年の暮れもあの蕎麦がいいな」
「えっ、もう年末の話かよ、…まぁ、いいけど…」
「来年も、再来年も、その次も…、ずっと食いたい」
「なんだか、長い約束だなぁ…」
「なぁ、いいだろ？ 一緒に食おうよ」
「…いいよ、おまえが飽きるまでずっと作ってやる」
うれしい返事に気を良くして
俺はほんのりあったまってきたひかるの手を強く握り締めた
「俺、飽きないよ、蕎麦もひかるも…」
「…？…」
「おまえのことは、ずっと好きだと思う」
「っっ……」
今のひかるの表情を覗き込みたいのは山々だけど
俺はグッと我慢した
俺なんとなく分かるんだ
今、顔を覗き込んだら、
おまえは怒ったフリして
きっと手を引っ込めてしまうだろう？
嫌なんだ、今この手を離すのは…
せっかく掴んだおまえの手をもうしばらく
ポケットの中で握り締めていたいんだ
なんてね、
やっぱり粉雪の舞う夜は
俺をちょっとだけ素直にしてくれる
たまにはこうやって真夜中の散歩道を手を繋いで歩くのも悪くない
俺たちの1年がまた始まった
今年も多分、今までと同じで
なんてことない日々を重ねることになるだろう
だけど、
そこにはかけがえのないひとがいる
大事なひかるがいてくれる
平凡の中にある、俺の確かなしあわせだ
＊＊Fin＊＊
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作者名：べす | 作成日時：2022年7月12日 20時
