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こぼれ落ちそうな笑顔で思いのままはしゃぐひかるの姿に
あぁこんな楽しげなひかる久しぶりに見たなーーって
つられて俺の頬も緩んでしまった
ひかるがふと振り返って言った
「やぶも雪、好きなんだな」
どうやら雪がうれしくて
俺がニヤついていると思ったらしい
馬鹿だな…、
そんなんじゃないよ
俺は雪が好きなわけじゃない
おまえがうれしそうなのを見るのが好きなんだよって
こころに浮かぶホントのことは言葉に出来なくて…
俺は気持ちを言葉でなかなか伝えられない
ましてやいちばん言いたいことは瞳で伝えるーー
なんて高等テクニックを持ち合わせてるはずもなく
だけど、
どうしても今夜は伝えたいと思うんだ
なんとしても
この気持ちだけは
粉雪の舞う夜は
いつもより素直になれる気がするから
俺はゆらゆらと両手を宙にかざし
雪を受けているひかるに近づくといきなりその手を掴んだ
ひかるの手はビックリするほど冷たくて
氷でも握ったようだった
ひかるはあわてて手を引っ込めようとしたけれど俺は離さない
「なんだよ…こんなに冷たくなって…」
俺はひかるの手を温めるように
ハアっと息を吹きかけた
そしてひかるの手ごと
自分のコートのポケットのなかに突っ込んだ
“ゴーーン“ と遠くで除夜の鐘が鳴っている
片手を俺に囚われたままのひかるは固まってしまい
下唇を思いっきり噛んだまま人形みたいに動かなくなった
さっきまでのはしゃぎようが嘘のように
借りて来たネコみたく大人しくなっている
そう言えば､ひかるは昔から
こういう押せ押せの俺に弱いんだ
*
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作者名：べす | 作成日時：2022年7月12日 20時
